〔特集〕
来年度の言語聴覚士研修会について

学院 言語聴覚学科 教官 坂田 善政

 学院では、社会的ニーズに対応した障害関係専門職の育成を目指し、年間30を超えるリハビリテーション関連研修会および知的障害・発達障害関連研修会が行われています。そのような研修会の1つとして開催されている「言語聴覚士研修会」は、毎年定員を大きく上回る申し込みがあり、好評を博しています。
 この言語聴覚士研修会の企画立案には学院言語聴覚学科の教官が当たっており、テーマの選定においては、⑴社会的ニーズがあること、⑵関連学会の研修会といった他の研修では行い難い内容であること、⑶当センターの強みを活かせること、を重視しています。

1 吃音をテーマとした研修会

 この度の国リハニュースに特集として取り上げられた「吃音」については過去に二度、平成20年と25年に言語聴覚士研修会で取り上げられていますが、両回とも定員の約2倍の申し込みがあり、吃音に関する専門的な研修への社会的ニーズの高さを感じます。
 当センターは設立当初から吃音のリハビリテーションに積極的に取り組んでおり、当センター病院に開設されている成人吃音相談外来および小児吃音外来で行われている先端的リハビリテーションや、それらに対する高いニーズは他稿で言及されているとおりです。また昨年には、森浩一総長が研究代表を務められ、当センターの職員も多く携わった研究開発課題の成果をもとに作成された『幼児吃音臨床ガイドライン』が公刊されました。

 吃音の領域におけるこれらの状況や成果を踏まえたとき、来年度の言語聴覚士研修会のテーマとして吃音を取り上げることは、正に時宜に適ったものであると考え、現在企画を進めています。

2 来年度の研修会のプログラム

 企画にあたっては、上記ガイドラインの内容を伝達するに留まらない実践的な研修となるよう、症例検討の時間も多く取り入れたプログラムを検討中です。
 言語聴覚士(ST)の現任者教育においては、対象とする障害類型によって、研修機会に施設間格差や地域間格差が存在しています。このような格差を解消する方策として、今年度の言語聴覚士研修会では構音障害を取り上げ、参加者が講師から継続的な助言を受けられる形式の研修会(3回シリーズの研修を実施、各回の間隔は2か月)を完全オンラインで開催しました。勤務施設内や近隣で、症例について相談できる先達のいないSTの、このような研修会に対する期待には大きなものがあり、実際に離島に勤務するSTの参加もありました。
 専門性の高いSTが少ない吃音の領域でも上記のような格差は存在し、このことが吃音臨床の裾野を広げる上での阻害要因となっています。そのため、来年度の言語聴覚士研修会も今年度と同様、経験の少ない臨床家が、熟練した臨床家である講師から継続して助言を受けられる形の研修会を開催する予定です。
 このような研修会が、吃音の領域における先端的リハビリテーションの均てん化に寄与し、我が国における吃音のリハビリテーションを質量ともに向上させる一助となることを願い、開催準備を進めてまいります。