〔特集〕
視覚障害を理解する
~病院・自立支援局での対応を通して~


病院 第二診療部長 清水 朋美

 視覚障害というと皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?当センター病院の眼科ロービジョンクリニックには、見えにくさでお困りの患者さんが多くいらっしゃいます。大半の患者さんは他の眼科から紹介されて受診されますが、患者さんや周囲の方々のお話をお伺いしていると、一般にはまだまだ「視覚障害=何も見えない」、「何も見えない=何もできない」と思われているのでは?と感じることがあります。今回、この2つの定説(誤解)を打ち消すために解説を加えていきながら、当センターの病院・自立支援局における視覚障害に対する取組みについてご紹介していきます。病院・自立支援局での対応の違いについては、図1をご参照ください。

1 視覚障害は何も見えない人だけではない

 視覚障害のなかには、何も見えないいわゆる「全盲の状態」の人と、部分的には見えるけれど十分には見えない「ロービジョンの状態」の人がいます。「ロービジョンの状態」は弱視とよばれることもあります。視覚障害者の大半は「ロービジョンの状態」の人で、その見え方は千差万別です。
 例えば、電車内では見える人と同じようにスマートフォンを見るけれど、電車を降りたら「全盲の状態」の人と同じように白杖を使うという人は普通にいます。このような人は自分の見え方を他者に口頭で説明するのが難しく、周囲の理解が得られず悩んでいることもしばしばです。「ロービジョンの状態」の人には、「手元の狭い範囲はよく見えるが、周辺部分はほとんど見えない」ということがあるのです。
 このように、時には白杖や点字を使うこともありますが、眼鏡等の補助具を見直すだけで見えにくさが改善することもあります。眼科で患者さんのニーズを確認し、それに対して改善策を提供することをロービジョンケアといいます。ロービジョンケアは眼科医、視能訓練士が主となって行われますが、看護師、後述の視覚障害生活訓練専門職員(いわゆる歩行訓練士、当センターでは機能訓練専門職とよばれています。)が関わるケースもあります。見えにくさでお困りの方は、ロービジョンケアをまずは受けましょう。最近は、ロービジョンケアに取り組む眼科が増えているので、お近くに対応可能な眼科があるかもしれません。

2 何も見えないと何もできないわけではない

 「全盲の状態」では、視覚の活用が難しくなります。人生半ばで「全盲の状態」になると不便なことが一気に増えます。あらゆることに対して否定形になりがちで、すべてできないと思うのは至極当然のことです。
 しかし、「全盲の状態」であったとしても、必要な訓練を受け各種制度を利用しながら、仕事も辞めず、日常生活を送ることは十分可能です。この専門的な訓練を担当するのは視覚障害生活訓練専門職員とよばれる職種です。「全盲の状態」のみならず「ロービジョンの状態」の人も対象に歩行訓練、日常生活動作訓練、コミュニケーション訓練等を主に担当しています。視覚障害者は視覚障害生活訓練専門職員から適切な訓練を受けることで、不便さを乗り越えて自分ができることにチャレンジしながら、少しでも自分らしさを取り戻していくことができます。まさしく、視覚障害に対するリハビリテーションを支えている職種です。
 
 今回、視覚障害による様々な不便を乗り越えるための医療や福祉サービスの訓練、さらには、視覚障害に対応する専門職の育成について、それぞれの専門職員に解説してもらいます。通読していただき、視覚障害の理解を深めていただく機会になれば幸甚です。


図1 国立障害者リハビリテーションセンターにおけるロービジョンへの対応


■眼科(ロービジョンクリニック)のご紹介(国リハホームページ内)
http://www.rehab.go.jp/hospital/department/consultation/shinryo/ganka/