頸髄損傷者リハビリテーションの拡充について
〜伊東重度障害者センターとリハセンターの統廃合後の状況〜
第二自立訓練部

 平成28年7月に、頸髄損傷者のリハビリテーションに長い歴史と実績を持つ静岡県伊東市にありました伊東重度障害者センターと、国立障害者リハビリテーションセンター(以下リハセンター)が統廃合されました。
 リハセンターにおいて、障害福祉サービスとして平成21年から取り組んでおります頸髄損傷者の自立訓練(機能訓練)を、新たに改修した建物と伊東重度障害者センターの職員を加えた新体制により、利用者員を90名に拡充して開始いたしました。
 リハセンターにて新しくスタートした頸髄損傷者の自立訓練(機能訓練)についてご紹介いたします。

1. 建物 リハセンター敷地内に独立した建物として設置
名称:機能訓練棟
機能訓練棟西 地上4階建て (旧病院新館を全面改修)
機能訓練棟東 地上1階建て (旧病院画像診断棟を全面改修)
画像:機能訓練棟
※リハセンター病院、本館(売店など)、自立支援局訓練棟と屋内連絡通路で接続。
2. 対象利用者:障害福祉サービス(指定障害者支援施設)が利用可能な方
(利用開始時)
身体障害者手帳を所持している頸髄損傷者等の重度の肢体不自由者
福祉サービス受給者証所持者(市区町村の給付費支給決定が必要)

適応:これまでの実績からの概ねの目安です。
急性期治療の後の回復期、慢性期にある方
15歳から概ね65歳くらいまで
訓練により何らかの機能向上が見込まれる方
訓練や日常生活の支援によって介護度の軽減が見込まれる方
3. 利用定員 : 90名
(参考:リハセンター旧定員20名、伊東重度障害者センター定員70名)
4. これまでの対象者像
伊東重度障害者センターの取り組み状況でご紹介します。
①参考 伊東重度障害者センターの期別・障害別利用者数
画像:伊東重度障害者センターの期別・障害別利用者数
※伊東重度障害者センターは、昭和28年設立、昭和40年代中頃より頸髄損傷者が増えた。創立以来の終了者1243名のうち、脊髄損傷者は1004名、内頸髄損傷者は740名を数える。
② 伊東重度障害者センターにおける期別・年齢階層別利用者構成比
画像:伊東重度障害者センターにおける期別・年齢階層別利用者構成
③ 伊東重度障害者センターにおける期別・出身都道府県別(東日本)利用者構成比
画像:伊東重度障害者センターにおける期別・出身都道府県別(東日本)利用者構成比
5. 訓練内容等
国立障害者リハビリテーションセンターホームページ
http://www.rehab.go.jp/TrainingCenter/japanese/General/training_limbs.html
伊東重度障害者センターホームページ(平成28年末まで公開)
http://www.rehab.go.jp/ito/
別府重度障害者センターホームページ(公開中)
http://www.rehab.go.jp/beppu/
6. 利用期間
①利用者個々の機能状態等により異なります。
②障害者総合支援法に定められた自立訓練(機能訓練)の期間内で、
アセスメントに基づく個別支援計画により市区町村の承諾を得られた期間
標準利用期間(給付費支給決定期間)  1年6ヶ月
※頸髄損傷による四肢麻痺その他これに類する状態にある方は3年間
7. 利用目的(利用相談を通して具体化していきます)
・ 身体機能の維持、向上 (粗大動作など応用動作まで)
・ 排尿、排便管理方法の習得
・ 生活関連応用動作の習得
・ 拘縮、褥瘡、感染症など二次障害の予防方法の習得
・ 障害状況に応じた自立度の向上による介護度の軽減
・ 習得した動作に応じた補装具、自助具の作製、住宅改修
・ 自動車免許の取得、免許更新後の習熟訓練
・ 就労、復職、復学のための環境調整
・ 社会生活技能の向上(公共交通機関の利用、日常生活訓練など)
8. 職員体制(頸髄損傷者の自立訓練(機能訓練)に係わる職員)
これまでの職員体制に、リハセンター病院からの職員派遣、伊東重度障害者センターから異動してきた職員、新規に採用した職員を加えて新体制を整え、充実したサービス提供体制をとることができました。
 新体制リハセンター旧体制
管理職(部長、課長)2名2名
医師(医務課長)1名
医師(兼務)2名1名
看護師(師長、副師長 他)11名 8名
介護員(介護長、主任 他)
 ※看護、介護は交替制勤務
18名+3名(時短職員)8名
洗濯手1名(時短職員)
理学療法士5名2名
作業療法士5名2名
運動療法士1名病院兼務
サービス管理責任者2名(1名兼務)1名
ケースワーカー4名3名
職能訓練1名+2名(非常勤予定)他事業兼務
自動車運転訓練2名+1名(非常勤)同左
※調理・食事提供・清掃・警備員は、リハセンター内一括契約。
9. 設備 (重度障害者センター並みの規模と設備になりました)
画像:
http://www.rehab.go.jp/TrainingCenter/japanese/TCletter/No31/1_story.html
・居室 入口電動ドア、電動ギャッジベッド、天井走行リフター、収納家具、ナースコール、インターネット端子など
・介護浴室(介護浴槽 3台) 各種介護トイレ設備
・自立トイレ(高床式・洋式) 自立浴室(高床式・座位式)
・男女別フロア トイレ設備、自立浴室など別フロア
・食堂 集団給食(調理師、配膳手、介護、看護が対応します)
・ケアステーション、看護処置室、面接室等
・職員事務室、洗濯室(洗濯手対応)、職員洗濯室、利用者洗濯室
・理学療法訓練室(プラットフォーム、訓練用自動車)
・作業療法訓練室(訓練用浴室、訓練用トイレ、日常生活訓練)
・職能訓練室(訓練用PC、昇降台)
・その他 立位者用居室、浴室、トイレ設備などあり。
・共用利用 病院体育館(バレーコート1面常時占有)就労移行支援訓練室
10. 追記 国立施設における頸髄損傷者のリハビリテーションの沿革
 国立伊東重度障害者センター(重度身体障害者更生施設 平成18年に指定障害者支援施設)は、昭和28年から63年間の歴史を持ち、昭和40年代の後半から、看護、介護、医学的支援を必要とする頸髄損傷者の利用が増え、医学的管理の下に日常生活に必要な機能回復訓練、日常生活動作訓練、職能訓練など自立に結びつく頸髄損傷者のリハビリテーションを行う福祉施設として静岡県伊東市で事業を行っていました。
 後に、国立別府重度障害者センターおいても頸髄損傷者に対する支援が始まり、昭和54年には、国立身体障害者センター、国立東京視力障害センター、国立聴覚言語センターの在京三施設が統廃合して設立された国立身体障害者リハビリテーションセンター(以下リハセンター)において、病院において、重度障害者センターのノウハウが取り入れられ、病院から重度障害者センターの利用という医療と福祉の連携がされてきました。また、リハセンター更生訓練所(身体障害者更生施設)においては、日常生活が自立した頸髄損傷者に対し宿舎、職能訓練、及び、国立職業リハビリテーションセンター(中央職業能力開発校)での職業訓練の提供が行われていました。平成18年より、障害者自立支援法に基づく指定障害者支援施設となり、伊東重度障害者センターは自立訓練(機能訓練)、施設入所支援を、リハセンター自立支援局(旧更生訓練所)は、就労移行支援、施設入所支援などの提供が行われてきました。
 平成21年からは、リハセンター自立支援局において、定員20名として重度センター同様の頸髄損傷者に対する自立訓練(機能訓練)が開始されました。
 今後は、統廃合により、伊東重度障害者センターの機能はリハセンターに移管され、東日本に国立障害者リハビリテーションセンター、西日本に別府重度障害者センターの2施設で頸髄損傷者の障害福祉サービスの提供を行って行くこととなります。


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