令和3-4年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研究事業)

課題名「技術革新を視野に入れた補装具の構造・機能要件策定のための研究」

 

令和3~4年度にかけて行いました 厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研究事業)課題名「技術革新を視野に入れた補装具の構造・機能要件策定のための研究」 の内容を、各種学会等での発表資料を基に、動画でご説明します。

 研究報告の詳細につきましては厚生労働科学研究成果データベースのサイトをご覧ください。現在、令和3年度の研究報告書が下記Webサイトで公開されています。

このページは主に令和3年度の研究報告をまとめたものです。令和4年度につきましては順次掲載していく予定です。

研究概要

 補装具は障害者の身体機能を代替・補完する機器・用具の総称であり、その支給のための環境整備は障害者の自立と社会参加を支援するために必須なものです。わが国では障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づき、「補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準」(以下、「補装具基準」)が整備されています。この基準は、飯田らの厚生労働科学研究(昭和53年)に基づき設計され、これまで運用がなされてきました。

 しかし、IT、AIといった技術革新の波は補装具においても新たな変革をもたらし、現在、大きな局面を迎えています。その結果、制度設計当時には想定しえなかった課題が出現し、技術革新による変化が補装具の利活用へ十分かつ速やかに反映されているとは言い難い状況が目立ち始めています。

 本研究では、補装具費支給制度における①3D技術の基本工作法への適用②義肢装具・座位保持装置の機能区分の整理、③支給基準に関する基礎調査、④意思伝達装置および感覚系補装具に関する実態調査の4課題を設定し、現行の補装具支給制度の問題点の抽出と検証により、技術革新によってもたらされる制度の課題と解決法の提案を目的としました。そして、令和2年度まで行われた「補装具費支給制度における種目の構造と基準額設定に関する調査研究」の調査結果を踏まえ、より深層となる調査を継続して行うことに加え、技術革新による新手法が従来法に適用された場合に過不足となる項目を抽出、整理するとともにそれを検証し、今後の運用法を提案することを目標としました。

研究全体の概要説明(動画)
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分担課題

①3D技術の基本工作法への適用
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 3Dスキャン、3D-CAD-CAM,3Dプリンタといった3次元デジタル造形技術は新たな補装具製作手法として注目されています。これらに関する実態調査を行うとともに、これまでの製作手法との比較を行いました。

•3D技術に関する実態調査

 

3D技術と従来法との比較

 

②義肢・装具・座位保持装置の機能区分の整理

 現在、補装具を製作するための完成用部品の数は3,000を超え、適切な補装具を製作するために、それらの中からどれを選択するかが容易ではなくなっています。さらに座位保持装置の部品ではその機能と分類の方法も確立されていません。この課題では、完成用部品の機能区分整理について検討を行いました。

•義肢装具の機能区分

 先行研究により提案された機能区分を整理するとともに、支給基準の区分における課題を整理しました。

•座位保持装置の機能区分

 

③支給基準に関する基礎調査

 現在の支給基準は、飯田らの厚生労働科学研究(昭和53年)に基づき設計され、これまで運用されています。しかし、50年近い年月を経て、この基準が現状にあわなくなってきました。この課題では、現在の製作手法による製作時間を計測し、当時のデータとの比較を行いました。また、借受けの対象として小児筋電義手を選び、試用評価における更新や修理対応の頻度等のデータを整理し、運用のための必要条件と課題を探りました。さらに、補装具製作事業者を対象に令和6年度改訂のための基礎データの収集を行いました。

義肢・装具・座位保持装置の支給基準に関する基礎調査

先行研究と同様に全国の製作事業者を対象にした実態調査を行い、基準改定のための基礎データを取得しました。

下肢装具の製作時間に関する調査

 補装具基準検証のため、3名以上の義肢装具士に依頼して義肢装具を実際に製作し、作業時間、材料費等の製作データを取得し、得られたデータと基本工作法のデータとを比較しました。

借受け制度と小児筋電義手

小児筋電義手の部品が借受け制度で運用できるのかどうか、試用評価における故障頻度等について調べました。

 

④意思伝達装置及び感覚系補装具に関する実態調査

 意思伝達装置および感覚系補装具の班では、視覚障害系補装具、聴覚障害系補装具、意思伝達装置の3つのグループに分け、現状調査として、市場調査(一般製品を含む流通製品の機能整理等)、市場調査(事業者への確認)、利用者(患者)のニーズ調査(アンケート等)、アンケート集計を実施し、市場(シーズ)と利用者(ニーズ)、他制度(日常生活用具、医療保険等)・他障害との整合性の調査、 行政調査(市区町村、更生相談所)、需要予測・財政試算を行い、具体的提案を導くことを目標としました。

 

視覚障害班

 視覚障害班では、視覚障害用安全つえの石突き、眼鏡型デバイスの性能比較、コンタクトレンズに関する調査を行いました。

視覚障害班の研究概要説明(動画)

 

聴覚障害班

 聴覚障害班では、デジタル補聴援助システムの修理対応、各種人工聴覚機器の修理対応について調査を行い、令和4年度からの告示改正でデジタル方式の補聴援助システムが補装具費支給制度に組み入れられました。

聴覚障害班の研究概要説明(動画)

 

意思伝達装置班

 意思伝達装置班では、PCアプリとして機能する意思伝達ソフトウエアを組み込んだ装置の実態調査、言語獲得時期にある児童への意思伝達装置の支給に関する実態調査を行いました。

意思伝達分野の研究概要説明(動画)

 

※本研究報告における考察・提案等は、研究班としての見解です。

※研究内容についてのご質問は kakaku-hosougu”@マーク”​​​​​​rehab.go.jp までお送りください。