福祉機器開発部

第一福祉機器試験評価室

第一福祉機器試験評価室では、「より安全かつ十分な機能を有した義肢装具」を使える社会を構築することを目的とし、義肢装具の試験評価に関する以下の研究を実施しています。

1.安全性・機能の在り方の検討

義肢装具は、壊れないように頑丈に作ると重くなり、使いにくくなる/価格が高くなるなど、相反する側面を持ちます。義肢装具の利活用を進める上で、安全性や機能をどのように考え、評価していけば良いのか?当室では、人間工学的な観点からユーザーと機器の関係に着目し、義肢装具を強度、耐久性、機能、ユーザビリティ、コストなど、多様な側面から捉えることで、安全性や機能の在り方を追求しています。

包括的な破損・修理対策に向けた下肢装具ユーザー像の構築

下肢装具は、種類が多く、ユーザーの特性も多様です。求められる安全性や機能は、ユーザーの疾患や障害レベル、活動度、体重等によって異なると考えられます。本研究では、評価方法の参考とするため、下肢装具を材質、継手の有無、支柱の形態等により分類し、それぞれの下肢装具について、想定され得るユーザーとの関係を示すマップを開発しています。

児童の下肢装具の利用状況収集

既存の下肢装具の規格(静的負荷試験)の課題として、大小様々な継手に対し、負荷値が標準サイズを対象とした一つの値しか規定されていないということが挙げられます。本研究では、児童用の小サイズの足継手の試験方法を検討するため、短下肢装具の利用状況収集を行っています。成人の下肢装具ユーザーの中心が脳卒中片麻痺患者で、歩行が負荷の主体となることに対し、児童では、脳性麻痺のユーザーが多く、痙性が強いケース、あるいは、活動度の高い二分脊椎のユーザーの走行等で大きな負荷がかかることが予想されます。

2.安全性・機能の評価基準作成

下肢装具の破損情報収集

試験評価の項目や評価法を検討していく上で、実用上、どのような課題が生じているかを把握、分析することが必要です。本研究では、破損した短下肢装具の写真、関連情報をスマートフォンやPCで登録できるアプリを開発し、全国の義肢製作所の皆様に協力いただいて、破損情報を収集しています。どの部位がどのように破損しているかの情報を集約し、強度や耐久性の向上が必要な箇所等の整理、抽出を進めています。

下肢装具の工学的試験評価に関する研究

下肢装具は、種類が多く、使用するユーザーも多様であることから、規格を作ることが難しく、義肢等に比べて規格作成が遅れています。既存の規格は、金属製下肢装具の足継手JIS T9214、あぶみJIS T9215、ひざ継手JIS T9216の3つのみ規定されていますが、本規格についても、サイズが大きく異なる支柱に対して、ひとつの負荷値しか設定されていないなど、妥当性が課題となっています。このため、本研究では、下肢装具の試験評価基準の見直し、作成に向けて、国内に流通する代表的な下肢装具部品(足継手等)の試験を実施し、データ蓄積と試験負荷値の評価等を行っています。また、これらの結果を基に、新たな試験評価方法の提案を目指しています。