スティーブン・ショア氏を囲んで
  〜第二回(2007年1月)〜


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スティーブンショアさんのお顔です。薄い黄色のべてるTシャツを着ています。
スティーブン・ショアさん

座談会について

2007年1月17日、北海道浦河郡浦河町のはまなす学園にて、スティーブン・ショア氏による音楽教室が午前中に行われました。そして、その日の午後、はまなす学園の先生方、通園されているお子さんの保護者の方々とともにスティーブン・ショア氏を囲み、午前中の音楽教室についての話題を中心に座談会を行いました。



はじめに

田中(はまなす学園スタッフ):

お見えになっていない方もいらっしゃいますが、そろそろ始めさせていただこうと思います。
スティーブンさんにはこちらに来ていただくのは2回目です。2回目の参加のお母さん方もいらっしゃいますし、初めての人もいらっしゃるのですけれども、今日はスティーブン先生に色々なお話を話していただきます。
前半に、こういう流れ(スケジュール表を示しながら)で午前中のグループで音楽療法を先生にしていただいたので、そのことについてちょっと話をしながら、色々お話し合いをしていきたいと思います。よろしくお願いします。

河村:

はい。それではちょっと、自己紹介を兼ねまして、簡単にご挨拶をさせていただきます。
私は国立身体障害者リハビリテーションセンターの河村と申します。よろしくお願いします。何人かの方には二度目にお目にかかります。
去年スティーブンさんがここへ来たときに、懇談会の最後に、「もう一回来ます。」と言っていたのですが、その約束を彼が果たしてくれまして、今日の朝、このあと紹介があります音楽療法のセッションやりました。
スティーブンさんは明日、実は教育委員会の方で講演会を行ないますので、そこでもまた詳しく自己紹介があるかと思いますけれども、ご自身が小さい頃、重度の自閉症というふうに診断されてました。今はアスペルガーというふうに言われていますれども、ご自身が自閉症です。
これまでずっと自閉症の研究をしてこられ、もう少しで学位をとられるところで、今は大学で教えておられます。また。今世界中を回って、いろんな講演をしています。
実はここへ来る前には、ここにいる私たち3人で一緒にプーケットに行っていました。プーケットで、津波の被害が二度とないようにという国際会議がありまして、その中に障害のある人たちも津波のときにちゃんと教育や訓練を受けて被害にあわないようにする、そのための色々な提案をしてきました。特にタイでは、王様のお孫さんが水上スキーもやる自閉症の方だったのですけれども、津波で亡くなりました。ですから、タイでは、津波については自閉症協会の方で非常に関心が高くて、二度とそういう被害を出さないようにしようという動きがありました。それに、スティーブンさんの方から、そういう教育のときにはこういう風にやったらいいんじゃないかという提案をしてきたわけです。
それで、ちょうどアメリカからタイに行くときは、日本経由で行きますので、「じゃあちょうど約束果たすのにいいね」ということで、今回また来てもらいました。
通訳を務めますのは、こちらにいます、この前も来ました八巻と私とで交代で務めさせていただきます。
それで、記録ですが、今日の音楽療法のセッションも、ご了解いただいてビデオも撮ってあります。それで、それを何回も見て、さらにその中から学んでいくということにも使えますし、その中のいくつかのシーンを選んで、他にも関心のある方々と一緒に考えるというふうに使うこともできますので、それもあわせて、皆さんのご了解の範囲の中で使わせていただきますので、その点もよろしくお願いいたします。
それでは、最初にですね、できればお互いに名前を知った上でやった方がいいと思いますので、まず私どものスタッフ、あと二人おりますので、ちょっと紹介します。
こちらにおりますのが熊野と申します。それから向こうで録画しておりますのが望月です。二回目に来ております。
それからこちらは通訳をします。

左から河村宏、スティーブン、八巻知香子の並んでいる写真。

八巻:

八巻と申します。よろしくお願いします。

スティーブン:

こんにちは。
またここに来られて本当に嬉しいです。この中の何人かの方は、私のことを覚えてくださっているかと思いますが、スティーブン・ショアです。
私は二歳半のときに自閉症と診断されました。まったくしゃべることもできず、医者からは施設に入所することを勧められました。私の両親は、音楽をふんだんに用いた早期療育を始めました。そういう経緯もありまして、私は音楽を使って自閉症の子どもたちを支援する活動をしています。
私は、世界中を回って、自閉症に関する相談に乗ったり、自閉症の子どもたちに音楽を教えたりしています。また一方で、自閉症の子どもたちにどうやって教えるのかをテーマにした学位論文を仕上げたり、本を書いたりしています。
このような私の活動は、新しく出版された2冊目の本「Ask and Tell」に書いてあります。これは、ちょうど先週、日本語にも訳されて出版されました。

八巻:

その2冊目の本「Ask and Tell」と言いますが、日本語で言うと、「尋ねてまた答える」というような意味なのですが、その2冊目の本が、かもがわ出版からちょうど先週刊行されました。
明日の講演会のときにその本が届く予定ですので、ご希望の方はお買い求めいただけると思います。日本語になったばかりのものです。

先生、お母さん方:

順番に自己紹介

河村:

それでは、最初に今日の午前中の音楽セッションの模様を、先生の方からご紹介いただけますか?
それを使って、どんなことやったかをまずご紹介したいと思います。

田中:

はい、うまく話せるかどうか自信がないんですが。
今日の午前中のプログラムは、スティーブンさんの方から提案をいただいたのですが、子どもたちのいつもの流れに沿うように、戸惑わないようにということで、極力いつもの流れを変えないようにしてやっていただきました。
それで、最初の40分間は好きな遊びということで、それぞれいつものように遊びました。スティーブンさんにもお店屋さんごっこみたいなのに何気なく入っていただいたり、キーボードを弾いてもらって、その音楽を聞きながら、子どもたちはここで遊ばせてもらいました。
その後、お集まりということで、いつもは職員がやっているのですが、スティーブンさんのキーボードに合わせて、いつもの「友達になるために」を歌いました。その時にスティーブンさんの方から一人ずつ子どもたちの名前を呼んでもらって、名前を呼ばれた人は立つというようなことをやりました。ちょっと慣れなくて泣いちゃった子もいたことはいたのですけれども。ここで、名前の確認をしました。
スティーブンさんがキーボードを弾き、全員がその前に座って歌っているところ 次に、楽器をやるということで、「雪やこんこん」と「やぎさんゆうびん」の楽譜を事前にスティーブンさんにお渡ししてあったので、伴奏していただいて、みんなで一緒に歌いました。
いつもの手遊びは省略しました。
スティーブン先生の方でリズム遊びということで、音楽を聞きながら楽器を鳴らしたりだとか、それからストップゲームというか、先生の伴奏が止まったらみんなも楽器も鳴らすのを止める、みたいな感じのゲームをしました。結構みんな集中してやりました。
それから、楽器の取替えっこをした後にもう一度やりました。先生の演奏する音楽がいつ止まるかわからないので、子どもたちもスティーブンさんの伴奏が止まったのに、誰かが「ぴっ」鳴らしちゃったりして、「あー間違った。」とか言いながら楽しく遊びました。
そのあとに、いす取りゲームのような形で、曲が終わったらいすに座る、座れなかった人はその周りで楽器を鳴らすというゲームをしました。色んな曲をずっと鳴らしてくださって、それに合わせて遊びました。最後はちょっと椅子とりゲームで一対一になっちゃったりして、おもしろい場面もありました。
その後、毛布ブランコを、職員もいつものような形でやりました。
そして、おやつということでいつもの流れで、その間にここでまとめの時間がいつもありますので、そこに皆さんにも入っていただきながら、お話をして、最後にさようなら、こんな流れでやりました。
とても短いですけど、いいですか?

子どもたちが歌を歌っているイラスト

河村:

大変要領よく説明していただいてありがとうございました。
今朝このセッションの後、まとめをお母さん方と先生とスティーブンも入って一緒にやらせていただきました。そのときいくつか感想が出ていたと思うのですが、参加されたお母さん方の感想を伺えればと思うんですけれども、いかがでしょうか?

お母さん1:

A(お子さんの名前)はスティーブンさんに会うのは2回目だったんですけれども、まあ1回目はちょっと挨拶を交わした程度だったので、最初はやっぱりちょっと、忘れているところもあって、ちょっとかたまり気味でした。
川本先生にずっと手をつないでもらったりして、ちょっと不安がっていたんですけれど、始まってみると、もうお名前呼びのときも立って返事できたりとか、楽器とかもすべての面ですごく積極的に参加してくれて、とても良かったと思います。
いす取りゲームでは、最後にB君とAだけが残って、いつもあるんですけど、ちょっとバトルがあって。そういうのもあって、C君がそれを見て泣いてしまったりして。まあでもそれもいつもの木曜日のメンバーで。
それから、すごくいいなと思ったのは、そのいすに座れなかった場合にやることがあるっていうか、楽器を持っていて、待っている時間もそんなに苦にならないというか、それがすごく良かったし、参考になりました。負けて座れなくても何か楽しいことがあるというのが参考になって、とても良い療育を受けさせてもらったと思います。
ありがとうございます。

お母さん2(B君お母さん):

やっぱり最初は、人が多かったので興奮してしまったというのはあったのですけども、名前呼びのときも、緊張したのか恥ずかしかったのか、自分で立ち上がるのが嫌だっていう感じで、先生に助けてもらってようやくできたといった感じでした。
でも、楽器のときのそのスタートストップのあれは、たぶん注意欠陥という障害だけあって、普段だったら絶対できないだろうなというような状況だったんですけど、ものすごい集中して、曲が止まるのを、待ち構えている感じでした。音楽が止まったら、「はっ」て、こうやってみたりとか、今までやらなかったなあと思って、すごく良かったと思います。
今日はそこにすごく感動しました。ありがとうございました。

河村:

(パソコンでB君のそのときの写真を見せながら)プロジェクターがなくてみなさんによく見えないかと思いますが、これ、その真剣に待ち構えているときの顔なんですね。本当に、真剣に待ち構えていましてね。
この写真も全部あとでお預けしますんで、振り返りにどうぞ使っていただきたいと思います。
えーっと、それではスティーブンさんからコメントをお願いしたいと思います。

スティーブン:

今日は10時にみなさんにここに集まってもらって、普段どおり遊んでもらいました。その間、私はただその場にいるだけでしたが、みなさん次第に私に慣れてくれました。これはこちらの先生方からご提案いただいたアイディアだったのですが、とてもよい方法だったと思います。
10時40分にプログラムを始めました。こちらの先生にご提案いただいたとおりに、子どもたちが既に知っている歌で始めました。
子どもの環境や予定に何か変化があったときは、変えるのは毎回、一つだけにする、ということはとても大切なことで、覚えておくと良いでしょう。
最初の歌を楽しく歌った後、「おともだちになるために」をうたいながら、そこにいる友達をお互いに確認しあいました。
自閉症の子どもというのは、自分と他者を区別するということが、難しいことがよくあります。ですので、セッションの始めに、お互いに確認しあうために、歌を歌いながら、子どもたちの名前を一人ずつ呼んで、呼ばれたら立つなどというようなプログラムをするのはとても大切だと思います。
他に大切なこととして、その日欠席の子どもがいた場合にも、あえてその子の名前を呼ぶようにします。そうすることによって、子どもたちは、今日はその子はお休みであるということに気づきます。そして、今日はお休みでも、その子の存在は、子どもたちの心の中に残ります。
子どもたちにとって、何か新しいことをしたときには、次は既にやったことがあることに戻すということが大切で、今日は、名前を呼んだあとに「雪」と「やぎさんゆうびん」を歌いました。みんな楽しんでいるようでした。
次は、また新しいことをやります。私がキーボードを弾きながら歌うのに合わせて、打楽器を演奏してもらいました。みなさん、とてもリズムや音楽の才能があるようで、私の伴奏に合わせてとても上手に楽器を演奏してくれました。
スティーブンさんがキーボードを弾き、音楽にあわせて全員が輪になって歩きながらスタート、ストップをしているところ 次に、私のキーボードの演奏に合わせて、打楽器を鳴らし、私が演奏を止めたら、みんなも打楽器を鳴らすのをやめるというゲームをしました。
ここのゲームで大切なことは、「ストップ」と「スタート」という生きるためにとても大切なスキルを教えるということです。例えば、子どもが道路に飛び出してしまったときに、お母さんが子どもに「止まりなさい」とか「進みなさい」とか言うのに子どもが従えないと危ないのです。
そのゲームをやっている間、子どもたちはすごく私の動きに集中していました。そして、誰かが、止まるのが遅れてしまったとき、それに気づいて、ちゃんと指摘してくれる子もいました。
別の大切なスキルとして、交換するということがあります。ですから、私たちが次にしたことは、他の子と楽器を交換するということです。
そのとき、楽器の交換が上手にできないお子さんがいらっしゃいました。私たちは、この子になんとか交換させたいと思ったのですが、その子はますます混乱してしまうようだったので、無理やり交換させるということはせずに、その時はその子がもっている楽器でそのまま演奏してもらいました。
しかし、、子どもが上手に物を交換できるようにするために、色々な工夫がありますので、ご紹介しましょう。 交換するのが難しいお子さんに対しては、一つの方法として、すばやく交換してしまうという方法があります。このように生徒が何かをもっているとします。例えば、ちかこが生徒だとします。生徒がまだあまり準備できていないうちに、取り替えてしまうのです。生徒がマラカスを持っているとして、このようにすばやく取り替えてしまいます。 その生徒が取り替えられたことに気づく前に、すばやく取り替えます。取替えに気づいてしまったり、このようにゆっくり取り替えた場合、生徒は混乱したり動転したりすることがあります。ですので、すばやく取り替えなくてはいけません。似ているもの同士を交換するというのも一つの手です。二つの似たようなマラカスがあるとします。私が片方のマラカスを使っていて、もう一方のものと取り替えるとします。子どもは今使っているのを気に入っています。私は、別のマラカスを使います。次に、子どもが持っているものと同じマラカスで色違い、例えば、赤の代わりに緑といった一点だけ特徴の違うマラカスを使います。次に、少しだけ大きいのや小さいの、というふうに順に取り替えていき、結局は、マラカスとたいこを交換する、という方法です。

マラカスのイラスト。

スティーブン:

楽器の交換をしたあとで、再び音楽に合わせて「スタート」と「ストップ」のゲームをしました。
そして、ゲームのあとは、楽器をいったん置いて、音楽に合わせて体を動かすゲームをしました。このゲームも、楽器の時と同じように、私がキーボードの演奏を始めたり止めたりするのに合わせて、お子さんたちも歩き始めたり、止まったりしました。音楽をとても速くしたり、逆にとても遅くしたりして、変化をつけました。
次のゲームは、椅子取りゲームです。椅子取りゲームは、よく理解して上手にできたお子さんもいますが、中には競争というものに慣れなくて、難しい子もいたようでした。なぜその子には難しかったのか考えてみましょう。
その子は、自分以外の二人の子どもが椅子を取り合って争っているところを見て、動揺してしまったようでした。そして、競争というものを怖がっているようでした。それには二つの理由があります。この子もおそらく、他の自閉症の子どもと同じように、その二つの理由で競争を怖がったのだと思います。
まず一つ目の理由は、検討がつかないという状況です。自閉症の人々は、予測できない状況というのがとても苦手です。というのは、世界はそもそもとても予測不可能なものなのですが、彼らはできるだけ予測可能なことにしがみつこうとします。そして、競争というのは、予測不可能のことの代表のようなものです。子どもにとって、競争という予測不可能なことをなるべく小さく、なるべく予測できるものにするためにはどうしたらよいでしょうか。そのための方法の一つとして、絵を使って、自閉症の子どもとコミュニケーションをとることによって、競争によって起こりうることを説明することです。
ですから、今回の場合ですと、二人のお子さんに椅子が一つありました。その二人の子が椅子の周りを回っていると、音楽が止まり、どちらかが椅子に座ります。するともう一人は別の場所に座ります。このように、競争によって起こることを予測できるものにしてあげることが大切です。
自閉症の子どもにとって競争が苦手な理由のもう一つに、感情をどう扱うかの問題があります。一般の人が考えるのと違って、自閉症の人々は、他者の感情に敏感なことがよくあります。自閉症の人は、他者の感情にとても反応し、その影響を受けてしまうということがあります。本当は自分の気持ちが違っても、他の人の影響を受けて、その人と同じ気持ちになってしまうのです。これはとても怖いことです。多くの人は、他者が怖がっていたり、喜んでいたり、何らかの感情をもっているときに、それはその人の中で起こっている感情だということを感じ取ります。ですが、自閉症の人は、その人の感情に影響されて、自分もその人と同じ気持ちになってしまうのです。自閉症の子どもの支援の一つに、この感情の融合を切り離してあげることというのがあります。そうすると、彼らは、他の人の気持ちはその人の気持ちで、自分とは別のものであるということがわかるようになります。
この二つの遊びのあとに、また子どもたちにとってなじみのある遊びに戻しました。毛布ブランコです。
その後、いつものようにお茶の時間とペープサートという、両方とも子どもたちにとっておなじみの時間をとりました。
そして最後に、みなさんがいつも歌っているお帰りの歌を歌って終わりました。
とてもよい音楽のセッションだったと思います。

河村:

ここまでのところで、何かご質問がありますか?
その場に参加してなかった方は、ちょっとイメージがわかない部分もあったとは思いますがいくつか今の説明を聞いて、質問がもしあれば、どうぞ。
もしご質問ないようでしたら、先生方のご感想をちょっと伺ってみたいのですが、参加された先生方いかがですか。

田中:

はい。とっても楽しく参加できたし、子どもたちも最初は緊張していましたが、だんだんほぐれていったようでした。
それに、そのストップをするところの集中には本当にびっくりしました。
それから、他の職員とも話をしていたのですが、キーボードの音量が少し小さいんじゃないかというふうに最初は思ったんですが、あのくらいの音量でも十分に聞き取れるんですね。普段はピアノでやっているんですけれど、もしかしたら大きすぎていたんじゃないかしらというようなことを感じました。

スティーブン:

最初はボリュームが小さすぎたと私も思いました。ですので、途中で上げました。先生の思っていらっしゃったとおりです。

田中:

でも、普段はもっとうるさい感じでやっているなというふうに思いました。

スティーブン:

今日はキーボードのほうを使ったのですが、その理由は、子どもたちと向かい合って、子どもたちを見ながら弾きたかったからです。ですので、ピアノではなくキーボードを選びました。

テレビのイラスト

田中:

聞こうとすればやっぱり聞こえるんだなっていうのが・・・。

八巻:

低めの方が集中力に役立つのか、ということでしょうか。

田中:

そういうのも、ええ。

スティーブン:

確かにそういう面もあると思います。というのは、自閉症の子どもも、そうでない子どもでもそうなのですが、音楽の授業で先生がとても大きな音でピアノを弾いてしまうということがよくあり、子どもたちにはうるさく聞こえます。
もっと小さい音で弾けば、子どもたちはそれを聞くために集中しなくてはなりません。

河村:

それでは、他の先生方いかがですか?

佐藤(はまなす学園スタッフ):

では、ちょっと僕が。
僕はA君と一緒にいることが多かったのですが、先ほど、A君がB君とバトルになるという話をお母さんが自己紹介のときにしていました。
そこで、その時の気持ちの問題の話で、泣いてしまったお子さんはその雰囲気にのまれてというのが一番大きかったんだと思いました。彼はきっと自閉症の診断は受けていないと思いますが。
はっきりとはわからないのですけど、気持ちの問題というところで、すごく自分の気持ちとその子の気持ちが違うんだってことがかなり難しいというお話でしたが、どういう結果になるかということを写真などを使って説明してあげるといいということだったんですけど、もう少し何か具体例みたいなのを通して教えていただけたらなと思います。

スティーブン:

自閉症の子どもにとって、世界というのはとても予測不可能なものなのです。最も良い方法は、できるだけ予定通りにできるようにしてあげることです。ですから、これから自分が何をするのかについては、すでにスケジュールが決まっていたとしても、より詳しいことを知らせて欲しいのです。例えば、今日は最初に歌う歌は決まっていました。そして、私自身の挨拶の歌を歌うと、それは私の歌であって、いつもの歌と違います。そしてその後、子どもたちの歌に戻ります。これらの今日歌った二つの歌は子どもたちもすでに知っている歌です。私は、このように予定を進めました。このようなことは、子どもたちがどのような方法でコミュニケーションをとるのであれ、言葉でもできますし、絵によってすることもできます。
一般的に、自閉症の子どもというのは、周囲の環境を他の人とは違うように経験し、違った解釈をしています。ですから、先生や両親は、周囲の環境についての学び方を、どうやって教えることができるかを考えなければなりません。そして、子どもたちが上手に周りの環境を理解でき、自閉症の子どもたちが他の人と同じように充実した生き生きとした生活を送れるように、強みを生かしながら、私たちは支援をしていくことが大切です。

河村:

はい、ありがとうございます。あともうひとかた、先生いらっしゃいましたね。

前川(はまなす学園スタッフ):

私はC君という、泣いちゃった子についていました。名前呼びのときに泣いちゃって、最初は椅子に座っていたんですけど、椅子からもおりちゃって、もうお母さんとこ行きたいという感じだったんです。
でも、そのあとに楽器の「ピッ」って止まるのをやったとき、音楽に合わせて、音楽がたぶんあったから本人もちょっと気持ちを立て直して、笑顔とかも見せて。やっぱり何もないより音楽があるところでやると気持ちとかも立て直せたのかな。音楽の力というのは、すごいなというのを感じました。

河村:

では、ひととおりご感想とコメントをいただいたんですけれども、実は、振り返りのお母さん方とのミーティングのあとで、スティーブンさんの方から、「また来ます」というお話があったんですね。本人もとても楽しんでいましたし、また来てぜひやってみたいというふうなことだったんです。
ですので、次に来たときにはどういうことをやってみたいのか、それを含めてこれから彼が今回のセッションをどう発展させていきたいと思っているのか、お子さんたちに対して、彼の方から次はどのようにして働きかけていこうとしているのか、それを少し聞いてみたいというふうに思います。

スティーブン:

次に来たときは、もっと音楽を使いながらレッスンをしようと思います。
そのときには、一人か二人の生徒さんで、音楽の学び方を学ぶことから始めたいと考えています。
私は、ボストンでは自閉症の子どもに、楽器の演奏の仕方や楽譜の読み方を教えるという活動をしています。私が関わっている生徒さんには、自閉症の色々な幅の子がいます。彼らの中にはより重度で言葉が話せない子もいますし、アスペルガーでとてもよく話をする子もいます。子どもたちに音楽を教えたり、楽器の演奏をしたり、今日やったゲームをすることは、ただ音楽を学ぶということだけでなく、様々な効果があります。生徒たちは音楽を通して、他の人と交流したり、友達を作ったり、地域社会と交わる方法と言うものも学ぶことができるのです。
自閉症でない子と同じように、私の生徒の中には、音楽が得意で、なろうと思えば、プロの音楽家にもなれるような子もいます。一方、音楽が苦手で、好きなんだけれども上手に出来ない子もいます。また、音楽に関心のない子もいます。そういう子には、音楽以外に別のものを探してあげます。

河村:

スティーブンにもうちょっと聞きたいことがありますので、それを聞きます。
今回は4人のお子さんと一緒にやったわけですけれども、次に来るときには、もう少し個別に音楽の指導をしてみたいということですか?

スティーブン:

(うなずく)

河村:

そういうことだそうです。実はですね、先程申し上げましたように、今回、プーケットに行って途中で日本を通るんだから、そのときを使って来たらどう?という話をしたんですね。ですが、もしこの次来られるのであれば、少し準備をして、もっと長くいられるようにできたらと思います。例えば一週間いられれば、全部のクラスに出ようと思えば出られますよね。それで、それぞれその音楽をどういうふうに使ったらいいのかというたくさんのアイディアが、たぶん彼の中にいっぱいつまっていると思うので、それをみんなで学べたらばすごく楽しみだなというふうに思います。
ですから、もし皆さんのご協力をいただければ、私どもの方で何かそういう機会を、今から準備すればそういうことも可能だと思います。ただ、時間的にはですね、彼が長くあけられるのはどうも夏の7月ぐらいらしいのです。それで、その頃皆さんのご都合がつけば、一週間ぐらいここに来て、皆さんと一緒にそれぞれの子どもに合う音楽セッションというのを一緒にやってみないかという提案をスティーブンにしてみたいと思いますけど、いかがでしょうか?どう思われますか?

お母さん方:

素晴らしい。

河村:

いいですか?6月か7月だと思うんで、スティーブンの一番都合のいいときに一週間くらい浦河に招待して、一緒に音楽セッションやってほしいんだけど、どうでしょうか?

スティーブン:

それは良いアイディアですね。でも、スケジュールをチェックしてみないといけませんが。予定がたくですさんありすぎて、覚えていないんです。

河村:

いつがいいかというのは確認しなければいけないけれども、でも、もう一回来るというのはとてもいい考えだと、賛成してくれているようです。
そこでですね、それを前提として、これからみなさんで、こういうことできないのかとか、今こういうことで困っているんだけどということを、たくさんスティーブンに言っていただいて、今度来るときに、彼が十分準備をして来られるように、ちょっと応援をしていただけると、より充実したことができると思うんです。
みなさんの方から、こんなことできるんだろうかというような、夢のようなことでもいいですから、これができたらいいんだけどということを遠慮なく言ってもらいたいと思います。そうすると、スティーブンは、できることはできるし、できないことはできないと言うと思いますから。

そういう少しご意見をいただければと思うんですが、いかがでしょう?遠慮なくどうぞ。

八巻:

「こんなことに困っているんだけれど、それを何とかできないでしょうか?良い方法はないでしょうか?」というご提案をいただきたいと思います。

河村:

彼はずっと自閉症の世界に生きてきて、研究しているプロですから、一番聞くのにいい人だと思います。いかがでしょうか?どうぞ。

お母さん3:

もう12歳なので小さい子ではないんですけれど、やっぱり子どもの様子を見ていると、周りとの接し方が苦手なので、構えてしまうところがあるんです。
それで傷つくところもあるし、失敗すると「失敗したくない、失敗しちゃいけない」と思って構えるところもあるし、そんな感じでちょっと、怖い顔をしていたり、暗い顔をしていたりするときが多いんです。何をどうしたら感じよく接したりとか、大きいことでいうと社会性を身につけられるかとかいう問題で、今、だんだん大きくなってきてそういうことが困ってるんです。

スティーブン:

そうですね。まず、できるだけ、娘さん自身が好きなことや得意なことができる時間をもたせてあげることだと思います。そして、そういった好きなことや得意なことをしていくうちに、他の人と一緒にそういう活動ができるようになっていくと思います。

河村:

どうぞ、あと他にいかがですか?はい、どうぞ。

お母さん4:

うちの子は、10歳の男の子で自閉症児なんですけれども、今困っていることがうちでふたつあるんです。一つは、とにかく小さいときから水が好きで、夏もここに来たとき、ずっとここで水をまいていて、冬の今現在でも外で水をまくんだって言って。
家でも色んなものを使って、玄関の水を、玄関あけたら水がだーっと出てくるぐらい水をまいて、とにかく一月の水道もすごいんです。もうそのこだわりがなかなか。一時期は、やるだけやって、満足するだけやったらやめるんじゃないか思っていたんですが、もうずっとで、今10歳なんですけど、未だにやる気が失われるどころか、どんどんどんどんみたいな感じで。そういうのは本当に終わるときは来るんだろうかということが聞きたいです。
二つ目は、テレビとかゲームとかがわりと好きな子なんですけど、すごくボリュームを大きくするんです。自分用のテレビみたいな、これはあなたが使っていいよというテレビがあるのですが、それをいつもフルボリュームみたいな、耳が壊れるぐらいの大きさで聞いていて、「小さくしてね。」と言えば、ちょっと小さくしてくれるんだけど、またすぐ大きくしてしまうというのを、もうずっと。
だから夏休みとか家にいる間中、うちはすごい水と音量とですごいことになっているんだけど、そういうのとかも訳があって、ボリュームを自分の世界にいたいために、そうやって他の私たちの声とかを聞こえないように大きくしているのか、何かそれもこだわりなのか、先生はどうなのか教えていただけたらなと思います。

スティーブン:

お子さんは、学校ではどうしているのでしょうか。普通に会話ができますか?

お母さん4:

私たちの言っている言葉はだいぶ理解しているようなんですけれど、会話というのは成り立ってはいないです。

スティーブン:

アスペルガーですか?

お母さん4:

うちは自閉症です。

スティーブンさんと自転車の写真です。

スティーブン:

何年生ですか?普通の学校に通っていますか?それとも養護学校ですか?

お母さん4:

5年生です。養護学校です。

スティーブン:

そうですか。まず、水のことに関してですが、お子さんの関心をそこから広げてあげることが大切だと思います。水はお子さんにとってとても大切なものなのでしょう。ですから例えば、水がどこから来ているのか話したりするのも良いのではないでしょうか。水がどこから来るのか話しをすることによって、地理や地質学の勉強になるでしょう。また、水がどうやって手に入るか話したり、都市計画や技術について話すこともできるでしょう。それに、水を無駄遣いするとどうなるかとか、滝がどうやってできるのか。それは気象学になるでしょう。
 この水に対する狭い関心を、水と関わるもっと別の関心に結び付いていくことによって、将来は、それに関する職業に出会えるかもしれません。
例えばこういう人がいます。私の友達で、その人も自閉症です。彼は気象学にとても興味をもっていました。彼は気象学に関すること以外は何も話さないような人でした。気温に対して非常に敏感で、暑さには耐えられないのです。それで、彼は気温は何度かということを実際に感じ取ることができるのです。ですので、部屋に入ってくるとこう言います。「この部屋は25度だね」。彼はこの関心を生かして、大学に行き、気象学の修士号もとりました。現在は国立の気象研究所で働いています。
私が今お話したのは、大学に行くことができた生徒の話なのですが、全ての生徒、全ての自閉症の人々が大学に行けるとはかぎりません。では、「我々はどのようにしてこの水への興味をいかし、役に立つ利用の仕方が出来、将来的に仕事につなげていけるのか」を考えます。私は一つの考えを思いついたのでお話します。
自閉症の傾向が強く、会話ができない生徒がいたとします。そういう子だと仕事をどうやって見つけるかが難しいことがあります。他の生徒さんの場合ですが、座ってじっとしていることができず、歩き続けてしまうと困難をもっている子がいました。はそこらじゅうをひたすら歩き回っていて、止まることができないのです。
多くの自閉症の子供たちと同じようにその生徒は何でも予測できることが必要で、ものもそれがあるべき場所に置いてないと気がすまない子でした。もしドアが開いていたら、それは閉められていなければならない。また、もし窓が開いていたら、それも閉められていないと気がすまない。もし何かが床の上においてあったら、それもどこかへ片付けないと気がすまない。その子はそういうタイプの人でした。
とても優れた職場の訓練者だと、とてもすばらしいアイディアをもっています。その生徒の訓練者は彼に床に落ちているものを棄てるということを教えました。ですので、もし何かが床に押していたら、彼は拾い上げてゴミ箱に棄てていました。その生徒は今、彼は印刷所内を歩き回ってプリントを拾うという仕事をしています。彼の仕事はそこらじゅうに落ちているプリントを拾って歩くことです。彼はプリントを拾って棄てる。とても楽しそうにやっています。
それでは、水に関心のある生徒さんのことを考えてみると、この子は水を配達するような仕事が向いているかもしれませんね。会社やお店、水を購入した人に水のボトルを配達するような仕事です。

お母さん4:

配達する仕事っていうのは?

八巻:

今だったらペットボトルの水を配達する仕事とか、という意味だと思います。オフィスの水を運ぶ仕事とか。

スティーブン:

水の仕事として、他に可能性があるのは洗車の仕事というのはどうでしょう。全ては彼の好み次第ではありますが。
他には、高圧のホースを使ったビルの清掃もこの場合、可能性があるでしょう。
ですから、まずは水に関する仕事を全て考えていくことから始めます。もしかして、彼ができるものを見つけることができるかもしれません。

河村:

たぶんね、ちょっと奇想天外に聞こえるかもしれませんけれど、彼はかなり真剣に考えていると思うんですね。
その関心をどうやって生かすのか、逆にものすごくそこに集中しているというのはプラスでもあるというふうに見方を変えられれば、それが伸ばせるはずだと。そのためには少し角度を変えて、いつになったらそこに集中が離れるかなというよりは、そのそこから広げてもっと、水にちなむことだけど、もっと広く関心が広がっていくというふうな道があるんじゃないかっていうふうに。
非常に私は共感を覚えまして、特に水というのは、水文学っていうのがあるくらいですから、朝から晩まで水を考えている学者というのは確かにいるんですよね、世界中に。そのくらいですから、決して悪くない関心なんじゃないか。
まあ現実的にはお困りの面があるんだと思うんですけれども。

お母さん4:

さっきの水道料金が。

河村:

でも、おそらくそれは生かすこともできる関心という見方もできるんではないのかなというのが、彼の提案ですね。
それはまたこの次来るときに、もう少しこうやってみたんだけど、その後どうだろうというような話もできると面白いなというふうに思いますけど。
次に来るときの、私が今心積もりしていますのは、できれば今年の夏ぐらいにまた来てもらえると、あまり間があかないで、一緒にやっていくという感じが強くなると思うんで、半年ぐらい後っていうことを目標に何とか呼びたいなというふうに思っています。

お母さん4:

よろしくお願いします。

河村:

他のお母さんたちいかがですか?どうでしょう?困っていることとかご提案とか。先生でもいいんですけど。お母さんに限りませんけれども。

八巻:

スティーブンが二個目の音のボリュームの話をしていません、と・・・

スティーブン:

二つの可能性をすぐに思いつきました。
一つは、聴覚の検査をして、聴覚の問題がないか確認しないといけないと思います。聴力が大丈夫だとしたら、もう一つ考えなければならない問題は、感覚の統合の問題です。そのために、彼は水に執着するのかもしれませんし、音をとても大きくして聞かなければならないのかもしれません。
というのは、刺激的なものを求めているのかもしれないからです。私たち自閉症の人間は、一般の人よりも刺激の強いものを求めます。水はある種の刺激ですし、テレビやラジオの大きな音、そういったものも刺激となります。
このお子さんの学習によっては、津波の学習に興味のある人として、我々の役に立ってくれるのではないですかね。

お母さん5:

うちの子は4年生なんですけれど、問題点がいっぱいありすぎて、今どれを聞こうかというのがちょっと今ごっちゃになっているんですけれども。
集中力というか、好きなことには好きでブロックだとか色んなものに対しては、集中力はある程度はあるんですけど、続かないというか、時間が30分なら30分っていう時間の組み立てができないというか、途中でもう投げてしまうというか。何時から何時までこれをやって、何時から何時までやるということの集中がつかない。だから、ちょっとでもやって飽きてしまう。
だから、一応計算は好きなんだけれども、飽きちゃって、こっそりと電卓でやっている。先生の前とか親が前にいれば、一応計算はしているんですけれども、いないときには電卓で計算をして済まそうとしている、そういう持続力がない。そういう力、集中力が短いっていうことがあるんです。だから、そういう点少しでも長くさせたいっていうのがあって、どうしたらいいものかっていうのがあるんですけど。

スティーブン:

お子さんの問題は、算数に集中できないということですか?それとも他のことですか?
今お母さんは、お子さんはたびたび計算機を使うとおっしゃいました。それはずるをしているということですか?それというのは、お子さんが計算の仕方がわからないからですか?それとも早く終わらせたいからでしょうか?

お母さん5:

いえ、計算はできます。時間があれば、一応できるんですけども、楽しよう、早く終わらせたいがために、電卓を出してきてしまう。

スティーブン:

電卓を隠してしまうというのも一つの手だと思いますが。

お母さん5:

一台はすてました。本人が一台持っていたのを、どっかに隠したんですよ。それで、親が使うのにとってあった電卓をどこかに隠したんですよね。まあそれで、えらく子どもも探し歩いているんですけれども。

スティーブン:

お子さんが計算機を使っているところを見たら、片付けてしまってください。お子さんにはお母さんの見えるところ、例えばキッチンとか、そういうところで勉強をしてもらってください。そうすれば、お子さんを見ていられるでしょう。
それから、お子さんにとっては勉強の時間が長すぎるのかもしれません。30分が長いのであれば、20分にしてみる。そして、次第に長くしていけばよいのではないでしょうか。

電卓のイラスト。

お母さん5:

はい。ありがとうございます。

河村:

ありがとうございました。大体4時をめどに終わりたいというふうに思うんですけれども、あとこれだけは次のときまでに、今即答が得られればそれでもいいけれども、宿題にして考えてきて欲しいということがありましたらどうぞ。どちらでもいいです。今聞きたいことでも、宿題にして次来たときに聞かせてくださいということでもいいです。何かありませんか?

お母さん6:

うちの子は、音程が、音楽聴いてもリズム感がない。毎日にようにカセットとかCDとかで音楽聴いていても、リズムが取れないというか、合わない。音感というか、リズム感が取れない、それを歌えない、一緒に歌えないというのがあるんです。

河村:

一緒に歌を歌えないわけですか?

お母さん6:

そう。棒読み、棒読みになっているか、音程がないというか、そういうような感じになっちゃうんです。だから、それを今何とかしたいと思うんですけれども、音楽聞かせてても同じ感じで、それがちょっとね。

スティーブン:

音程を合わせたり、音程やリズムを維持したりする能力は人によって様々です。音楽の才能というのは人によって違うんですね。自閉症であろうがなかろうが、いくら音楽を勉強しても、音楽の能力がある人もいればない人もいる。
でも、私は音楽を勉強するにはまずリズムから始めるのが良いと思います。まず最初に、例えば、リズムに合わせて歩いたり行進したりします。そして、拍子ごとに歩いたりすることから始めるのがよいと思います。体でリズムを覚えることができたら、リズムというものがわかってくると思います。まずさいしょにリズムから始めて、次に音程に移りましょう。

河村:

次に来る機会に、そのお子さんとスティーブンとでそのセッションをちょっとやってみたら、いいんじゃないかなと思います。

スティーブン:

はい。

お母さん6:

お願いします。

河村:

そろそろ時間が終わりになってしまったので、最後にまとめの言葉をスティーブンから言ってもらいたいと思います。

スティーブン:

もう一度みなさんに会えてとてもうれしかったです。ほとんどの方が今日二度目ですよね。
今朝はお子さんたちと一緒に音楽の授業をしたのですけれども、とても楽しくやれました。そして、また夏にここへもう一度来て、みなさんともう一度お会いし、お子さんたちや先生方と音楽で楽しいひと時を過ごせることを楽しみにしています。次に来るときは、今日やったことに合わせて、新しいこともやってみたいと思っています。リズムや音程に合わせたり、楽譜の読み方だとか、楽器の演奏の仕方もやりたいと思います。
私は今回、みなさんがお子さんたちのために一生懸命関わっていることが非常によくわかり、そのような先生方やご両親をもったお子さんたちは、本当に幸せだと思いました。ありがとう。

お母さん、先生方一同:

ありがとうございました。

河村:

これをもちましてこの会を閉じさせていただくのですけれども、私たちの国立身体障害者リハビリテーションセンターでは、災害のときに誰も犠牲にしない、そういう取り組みを今浦河でさせていただいておりまして、それはまだこれからもずっと続けていくつもりです。
それで、さきほど言いましたように、タイのプーケットに行って、世界中でこういう取り組みをやりましょうという呼びかけをしてきました。特に自閉症のお子さんの場合には、きちんとトレーニングを受けるということが一番安全を守る上で大事ですので、それは重点的に取り組む課題として、この後もスティーブンと一緒にこの浦河でしっかり、私どもも是非勉強させていただきたいと思っています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

【翻訳・編集: 望月美栄子、八巻知香子】

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最終更新 2009年6月16日