○支援機器の様々な機能を有効に活用するためには、生活環境にも着目する必要がある。住環境や生活環境が整備されていなければ、社会活動の中で円滑な移動を行えないからである。 ○また、駅等の施設はバリアフリー化が進んだというものの、どの経路を進めばエレベーターや多目的トイレがあるのか等のソフト面での情報支援も必要である。 ○さらに障害者等が安心、安全に地域で暮らすためには、見守りシステムの構築も重要な視点であり、IT機器を活用したシステムが開発されている。その際、障害者が「見守られる」だけでなく、障害者が「見守る」側で働くという取組み事例も紹介されている。 ○ここでは、ハード面での生活環境整備とバリアフリー情報支援、IT機器を活用した見守り支援システムについての対応状況や課題等を整理する。 |
@ 生活環境要素と自立生活
第7回勉強会資料(佐賀大学大学院医学系研究科准教授 松尾清美氏)」より
A 生活環境設計や生活行動支援の流れ
「第7回勉強会資料(佐賀大学大学院医学系研究科准教授 松尾清美氏)」より
開発のビジョン
○ 身体機能や生活方法に適した支援機器と住環境整備の供給支援体制の普及
・ 支援機器の適用や住宅改修は、多くの場合、情報提供、使用イメージの構築、入手支援、適応指導、生活動作のシミュレーション、生活イメージの構築、住環境の整備、アフターフォローなどのさまざまな支援の過程と集積によって実現するもの。
○ 支援機器や住環境整備の相談ができる人材の育成
・ (財)テクノエイド協会の「福祉用具プランナー研修」カリキュラムにおいて、支援機器や住環境整備についての知識・技術の習得をさらに充実させる等。
○ 障害者のライフステージに応じた支援
・ 障害者のライフステージ毎に問題点や課題を抽出、整理した上で、対応を考えていく必要がある。
○ 関係機関等との連携
・ 障害者に適切な支援機器や住環境(生活環境)を提供するには、厚生労働省をはじめ経済産業省、国土交通省等の関係省や、日本リハビリテーション工学協会などの関係機関とも連携協力しながら進める必要。
課題
○ 公営の「障害者用住宅」の基準の見直し
・ 障害者の住環境整備を行う上でベースとなる建物の基準が整備されていないと、大がかりな改修が必要となってしまう。
○ 身体特性を見極めた上での住環境整備
・ 一律的な改修工事により無駄な公費が使われないよう、身体特性を見極めた上で最小限の改修で済むための専門家の関わりが期待されている。
○ 専門家のスキルアップとチームの構築
・ 住環境整備に関わる専門家には、それぞれの専門特性に関する知識習得の努力が求められている。また、住環境整備と支援機器の選択をセットで捉えた上でチームを構築しアプローチすることが重要。
1)情報環境としての目標
○ 情報バリアフリー
障害者をはじめ、高齢者や健常者も含め多様な人々が、日常生活における様々な施設・サービスの利用や他者との意思疎通を図る際に、妨げる要因があるなら、それを円滑に克服できる様に環境を整えることが「情報バリアフリー」といえる。
その実現には情報環境の整備における以下の目標がある。
・ 生活行動の中で発生する目的に則した情報が、本人にわかりやすく理解できる状態で存在すること。
・ 何時でも、何処でも、メディアや身近な日常の事物から、利用しやすい形式を選択し、快適に受容できること。
○ バリアフリー情報は自律的な外出支援の基盤情報
健常者以外、特に障害者にとっては外出先の施設情報、特にバリアフリーについての情報を外出前に入手出来ないことは大きなリスクである(施設を利用できない可能性があるため)。必要な情報を得られない状況は、自立的な外出を妨げる要因となる。
「施設や人的対応」などが整備されても、その情報を利用者が入手でき、わかるように伝えらなければ「バリアフリー施設や人的対応」は無いに等しいといえる。
○ 利用者視点の親切でわかりやすい情報提供
バリアフリー情報においては、利用者の情報入手における負荷を一層減らす視点が重要。
@情報内容
・状況理解・案内に必須な情報の厳選(随伴情報の過多はノイズ)
・バリアフリー化施設の情報だけでなく未整備情報
・具体的施設利用現場で必要となる実用的情報や人的対応
A情報表現
・必要情報への到達利便性
・身体特性の異なる利用者への最適化・UD対応の視点
B情報環境整備への課題
・利用者の求める情報の項目・内容や表現について体系化されていない。
・公共的な案内情報の発信主体は、概ね施設管理者や自治体等であるが、情報の項目・内容や表現について統一性、整合性が十分とはいえない。
・またそれらの情報更新の担保や積極的な情報発信を促す仕組は未整備。
バリアフリー情報の支援環境を理解する上で、交通領域は施設整備が進み、その情報化が国や自治体、NPOも含め進められている先行領域といえる。
現 状
○ 施設利用のための情報整備について、利用者評価は低い
・施設のバリアフリー化整備が進展している鉄道では、利用者の6割がエレベータなど施設「ハード」整備を評価。しかし駅の現場では、バリアフリー施設とそこへの移動円滑化経路を探しての迷い、ホームや他社線への乗換えで迷いが多い。歩行制約者ほど迷いは顕著で「駅の案内はわかりにくい」と評価は低い。
・ 外出前にバリアフリー情報を得ようとするが、利用のメディアで「必要情報が満足に得られない」と評価が低い。
・ 駅施設利用のための案内環境の改善が、利用者の「外出のしやすさ」と「事業者への評価」につながる。
○ 経路空間についての案内情報は、事業者・都市間で内容や表現に連携や整合性が欠けている。
○ 海上交通では施設の整備ガイドラインが昨年策定された。
開発のビジョン
○ 高齢者・障害者の外出に際しては事前の情報入手と利用鉄道駅での案内が外出のしやすさにつながる。移動経路等の情報をわかりやすく表現し提供していくことが必要。
○ 情報内容
・障害者をはじめとした当事者参加
○ 情報表現
・提供情報についての障害別評価、提示方法やあり方
○ 情報環境整備への課題
・整備施設の活用を図る上でバリアフリー情報としての案内機能を担保するガイドラインの検討
・交通機関間乗換えや重点整備地区における案内整備連携策検討
・情報流通面での自立・継続性のある情報更新・維持管理体勢の検討
3)目的施設利用の情報バリアフリー
高齢者や障害者が、その生活領域の公共的な施設空間についてのバリアフリー情報を容易に得られることは、単独外出や自立的な生活の支援につながり、介助関係者も含めその影響範囲は広いといえる。
○ バリアフリー施設整備に対し、利用のための情報整備は遅れている。
・社会保険事務所、保健所、保育所、ハローワーク・ハローワークプラザ、病院・医院等ではバリアフリー施設整備は進んでいるにもかかわらず、インターネットなどではその情報を見つけられない場合など、情報整備は遅れている。整備資産の活用の側面からも対策が重要。
・ 施設案内の情報は、施設管理者・所管省・自治体など発信主体は異るが、バリアフリー情報については、その提供され方に統一性、整合性が欠けている。
○ バリアフリー情報整備が急がれる重点施設群の設定
・ 高齢者、障害者の外出に際しては事前にバリアフリー情報入手が必要であることから、公共公益性が高く情報整備を急ぐべき施設の選定を行い重点的に整備する。
○ 生活シーンとしてのバリアフリー情報の案内連続性の確保
・ 施設利用局面で必要とされる情報項目・内容の把握
・ 現状の情報提示状況の把握と構造的課題点の掌握
・ 案内すべき情報のプライオリティの明確化と共通化すべき情報表現・考え方の整理
・ 利用者視点の同種施設間比較選択
・ 生活圏単位における重点施設群のバリアフリー案内連携
・ 障害者をはじめとした当事者による情報環境改善への参加
○ バリアフリー情報整備ガイドラインの検討
・ 整備施設の活用を図る上で、提供情報の案内機能を担保する考え方が必要
・ 具体的施設利用現場で必要となる実用的情報の図記号化を含む標準化
・ 重点施設群を対象としたバリアフリー情報提供例示モデルの開発
・ 提供情報についての障害別評価、提示方法やあり方
○ 情報バリアフリーガイドラインの検討
・ 生活シーンの各局面に係わる、様々な事案に対し、それらの実施関与者が障害者をはじめ海外からの訪問者も含め、情報伝達機能を担保できるよう、情報バリアフリーへ向けての検討。
・ 特に、伝達すべき情報内容の表現対応・UD対処については、デザイン検討方法や評価手法等の研究対応が求められる。
「第7回勉強会資料(NPO法人まちの案内推進ネット理事長 岡田光生氏)」より
「第7回勉強会資料(NPO法人明日に架ける橋理事長 多田羅穣治氏)」より
○ これまでの防犯カメラ等での見守りシステムでは、事件・事故発生後に早急に対処することに重点が置かれており、未然に防ぐことは困難。
また、従来の緊急通報システムでは声のみが通信であり、具体的な状況の把握が困難であった。
○ 光ケーブルの敷設やインターネットの普及等により、IT機器を利用した見守り支援については様々な取り組みが始まっているところ。
○ 高齢者等の緊急通報システムから見守りシステムへの発展を指向し、実証実験の実施、分析等を実施。
○ 学校等の見守りシステムの例
「第7回勉強会資料(NPO法人明日に架ける橋理事長 多田羅穣治氏)」より
「第7回勉強会資料(NPO法人明日に架ける橋 理事長 多田羅穣治氏)」より
○ 独居高齢者等の見守りシステムの例
〈左図説明〉
○ 技術イノベーションをソーシャルイノベーションへ
・ 技術革新が市場を生み出し社会を変える。(市場が生まれなければ社会は変わらない。)
・ 障害者雇用の促進を合わせて行うなど、障害者や高齢者も社会の一員として巻き込んだ考え方が必要。
○ 学校等の見守りシステムの例での課題
・ 学校や保育所側で見守りシステムを導入したくても、初期導入費の予算がないところが多い。貸付制度等の支援策が必要。
○ 「緊急通報・見守り」システムの開発
・ 現在のインフラ整備状況を踏まえ、インターネット光通信を活用した「緊急通報・見守り」システムの開発が必要。
・ 開発したシステムの普及への支援策等が必要。
・ 「緊急通報」は広域、「見守り」は地域単位での体制整備が必要。
・ 災害時の支援システムへの発展も視野に入れた開発が必要。
「第7回勉強会資料(日本電気(株) マーケティングマネージャー 北風晴司氏)」より