乳幼児期とは?
乳幼児期は人に向けてのコミュニケーションが芽生える時期です。
模倣
子どもは生後9ヶ月ごろから真似をしたがるようになります。大人が日ごろおこなっている、化粧や歯磨きなどを、そばでじっと観察して、真似しようとすることはありませんか? また、「あー」、「うー」など、大人の声と同じように声を出すこともあります。
余裕があるときには、子どものいろいろな動作や声を真似したり、また子どもに真似してもらったりといったやりとり遊びをしてみましょう。大人の真似をするのは、子どもが周囲の人に興味をもっている証拠です。これからことばを覚え、毎日の生活習慣をつけるうえで、とても大切な対人コミュニケーションの第一歩となります。
写真で見る「模倣」
大人が人形にコップで飲み物を飲ませるふりをすると、1歳6ヶ月の女の子は、すぐに同じ動作を繰り返しました。
模倣を引き出す遊びの工夫
子どもが興味をもちそうな、なじみがあるおもちゃを用意してあげましょう。車や飛行機のミニチュア、動物のぬいぐるみ、おもちゃの電話機やコップなどがいいでしょう。子どもと向かいあって遊びながら、車を「ブーブー」といいながら動かすのをみせてから、子どもに車を渡すと、子どもは喜んで同じようにして遊ぶでしょう。また、コップで「ゴクゴク」と音を立てて飲むふりや、電話の受話器を耳に当てて「もしもし」と話すふりをしてみてもいいでしょう。子どもが喜ぶようないろいろな動作をしてあげましょう。
呼名反応
おすわりがしっかりできるようになったら、子どもに「○○ちゃん」と呼びかけてみてください。それが自分の名前だと、まだ理解していなくても、大好きな人に呼びかけられていることはわかって、呼んだ人の方を振り向きます。あなたがニッコリと笑いかけると、子どもも嬉しそうに笑い返してきませんか? これは、大人の呼びかけに反応し、相手からのかかわりを待つというコミュニケーションが、子どもに芽生えているということです。
子どもがほかのことに夢中になっていたりすると、呼んでも振り向かないことがあるかもしれません。そんなときは、少し待ってからもう一度声をかけてあげましょう。
写真で見る「呼名反応」
1歳6ヶ月の女の子は、名前を呼ばれると、すぐに顔をあげてお母さんに笑いかけました。
「呼名反応」を引き出す遊びの工夫
遊びながら、さりげなく「○○ちゃん」と呼びかけてあげましょう。子どもは呼んだ人の方をしっかりみますね。呼びかけに振り向いたり、目を合わせたりすることで、「呼びかけに気づいたよ。なあに?」という合図を大人に送り、コミュニケーションを始めようとしているのです。
指さし
子どもは、1歳過ぎくらいから、「指さし」(手の届かないところにある物などを示すために、人差し指を向ける)をするようになります。まだ十分にことばを話せない子どもにとって、指さしは、自分の要求や興味のある物を大人に教えたりするための、大事なコミュニケーションの道具です。
子どもは、指さしをしながら、じっとあなたの顔を覗き込んだり、声を出したりして、一生懸命に何かを訴えてくるでしょう。もし子どものいいたいことがわかったら、「ああ、ミルクが欲しいのね」、「あら、かわいいワンちゃんね」などと語りかけてください。そうすることによって、子どもは新しいことばを覚えていきます。また、自分の思いが大人に通じたことがうれしくて、もっともっと伝えようとするでしょう。やがて上手にお話しできるようになると、指さしは減っていきます。
写真で見る「指さし」(1)「要求の指さし」
1歳6ヶ月の女の子は、欲しいおもちゃを見つけたので、「それ取って」というように、お母さんに指さしして要求を伝えています。
写真で見る「指さし」(2)「興味の指さし」
かわいい椅子をみつけて「こんなかわいいものがあったよ」というように、指さしして自分の興味を大人に伝えています。
「指さし」を引き出す遊びの工夫
まだ十分にことばが話せない子どもは、「欲しい」と思ったり、「こんなおもしろいものがあった」と思ったりしたときに、なんとかして大人に自分の思いを伝えようとして指さしをします。まずは、子どもが好むものや興味をもつものが何なのかをわかってあげることが大切です。
子どもの好みのおもちゃや興味があるものを使って遊んであげると、指さしが自然とたくさん出てきます。ときには、好みのおもちゃとそうでないおもちゃを2つみせて、どちらが欲しいのか、指さしで選ばせてもいいでしょう。
大人がシャボン玉を吹いて遊んであげたりすると、子どもはとても興味を引かれて、伝えるための指さしが出てくることが多いようです。
なお、子どもが自分でやりたがる際には、シャボン玉液を飲み込まないよう注意しましょう。
ごっこ遊び
「ごっこ遊び」は、物をまるで別の物のように見立てておこなう遊びです。人形をまるで生きている人間のように扱い、口に食べ物を運んで食べさせるふりをしたり、相手が「チョーダイ」というと、食べ物に見立てた物をお皿にのせて「ドーゾ」と差し出したりします。
最近は実物さながらのおもちゃも多いですが、発達にとって大切なのは、身の回りにあるなんでもないものを本物に見立てる力です。砂をごはんに見立てて茶碗に入れたり、積み木を車に見立てて「ブー」と走らせる様子がみられたりしたら、ごっこ遊びに発展した証拠です。
できたら、大人も一緒に遊んであげましょう。大人がごっこ遊びをすると、「○○ちょうだい」、「○○っておいしいね」などと場面に合ったことばかけをするので、遊びが広がります。子どもの想像する力がさらに刺激され、遊びのレパートリーが広がるのです。
幼稚園・保育所では、お店屋さんごっこや電車ごっこなど、仲間とのやりとりを豊富に取り入れた複雑な遊びに発展していくでしょう。子どもは人とのごっこ遊びを通じて、世の中のいろいろな役割やルールを覚え、経験を蓄えていくのです。
写真で見る「ごっこ遊び」
1歳2ヶ月の男の子は、ごっこ遊びに夢中になっています。この場面は、ぬいぐるみにケーキを食べさせているところです。
「ごっこ遊び」を引き出す遊びの工夫
人形やぬいぐるみ、食べ物のミニチュア、お皿、コップ、ティーポット、フォーク、ナイフなどを用意して、おやつパーティを開いてあげましょう。子どもは、それらのおもちゃを見ると、自分がいつもしてもらっていることを自然に思い出して、ごっこ遊びを始めることでしょう。
たとえば、人形やぬいぐるみに食べ物を食べさせたり、大人に食べ物や飲み物を差し出したりするごっこ遊びが気に入るかもしれません。そのほか、おもちゃの受話器をもって電話で話しているふりをしたり、おもちゃのフライパンで料理するふりをしたりもするのではないでしょうか。男の子は、おもちゃの車や飛行機に人形を乗せるなどして遊ぶのが好きかもしれません。女の子は、ぬいぐるみや人形の着せ替えをしたりして遊ぶのが好きなのではないでしょうか。
参考資料
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