子どもの特性を理解することは、親子にとって有意義なことです。子どもに発達障害の可能性が疑われる場合、どんなふうに親に伝えればいいのか、考えてみましょう。
以下の資料もあわせてご覧ください。
発達障害教育推進センター研修講義「幼児を養育している保護者とのかかわり」
自閉症スペクトラム児早期発見後:子どもの特徴の親への伝え方(PDF:187KB)
→「発達障害の子どもと家族への早期支援システムの社会実装」より
子どもの特徴を親に伝えることの意義
幼児期の子どもに発達障害の可能性がある場合、社会性が芽生えるその時期に、発達段階に合った適切な養育環境を整えることが大切です。確定診断ができない場合も、子どもの発達の特徴(とくちょう)を親に伝えることで、子育てを応援し、子どもにとってより過ごしやすい生活環境を整えることが可能になります。発達の特徴を親に伝えることは、子どもに否定的な刻印を押すことではなく、よりよい成長を促す親子支援の出発点をつくることになるのです。
これまで、親が子どもの問題点に気づいても、専門家による評価を知るまでに時間がかかることが多くありました。この期間は「不安の高まる非常につらい時期であった」という親の声も聞かれています。子どもの発達について心配がある場合、多くの親が「自分の子育てに問題があったのではないか」と自責感や無力感に悩むことがあります。また、子どもの特徴を「わがまま」などととらえ、厳しい躾(しつけ)へと向かうことで、虐待につながる問題や、それによる苦痛を子どもが抱える可能性が生じます。
子どもの発達の特徴を伝えることで、親の不安を軽減し、「親の育て方の問題」、「子どものわがまま」という解釈を修正することになります。そして、子どもへのよりよい理解と、より適切な子育て方法を助言することが可能になります。こうすることで、子育てをする親への実践的な支援に結びつくことでしょう。
伝える側が知っておくべき親の声
子どもの年齢や行動の特徴、親の個性や家庭の状況、伝える側の専門的立場などがさまざまであるため、評価を伝える側は個々のケースに合う対応が必要となりますが、一般的な基本姿勢として、以下の3点が大切です。
- 親の心情への配慮
- 子どもの発達面の詳しい評価
- 療育や親支援の情報のすべてを念頭におく
たとえば、親の心情に気を遣いすぎて正確な評価や情報を伝えなければ、子どもの状態を的確に把握できなくなることがあります。逆に、正確な評価を親の心情に配慮せず伝えた場合、親は理性的にも感情的にも受け入れられず、適切に対応できなくなる可能性がでてきます。また、親の心情に配慮して正確な評価を伝えても、次のステップの道筋を示さなければ、親が適切な行動を起こすことは難しいでしょう。
これらを確実に行っていくには、さまざまな立場で異なる役割を担う専門家がチームとなり、親子を支援する連携体制を整えることが必要となります。
実際にどのように伝えるか
下に記した手順は、医療・福祉の専門家が繊細な情報を患者に伝える際のガイドラインを基にして、作成したものです。親にも一人ひとり個性があり、さまざまな受け取り方や反応があります。個々のケースに合わせて応用・工夫し、ご利用ください。
- 面談の設定をする
- 親に気づきがあるか、どのように認識しているかを把握する
- 親のペースに合わせて情報量を加減する
- 評価や情報を提供する
- 親の感情に応える
- まとめをして方針を立て、次のステップにつなげる
伝えた後の留意点
親にとって、我が子に「障害」という診断名がつくことや、その可能性を示されることはたいへんな衝撃(しょうげき)であり、心に重い負荷がかかります。親が気づいていても気づいていなくても衝撃はあります。悲しみや怒り、できればそれを認めたくないという気持ちが生ずるのは当然であり、その気持ちは簡単に解消できるものではありません。
伝える側は、単に評価を伝えて終わるのではなく、親のおかれた立場や気持ちを理解し、長い目でみる姿勢が求められます。また、親が子どもの特徴やニーズを理解して、必要な養育や療育行動の一歩を踏み出せるまでには紆余曲折(うよきょくせつ)があることを伝える側はよく理解し、その一連のプロセスを支援することが必要です。