コクリハニュース

第375号(令和6年秋号)特集

特集2『障害者に関する防災・災害への取り組み』

発達障害情報・支援センターにおける災害時の発達障害児・者支援に関する取り組み

企画・情報部 発達障害情報・支援センター

 災害時の発達障害児支援に関する、発達障害情報・支援センター(以下、弊所)での取り組みについて、概要をご紹介します。

1 リーフレット「災害時の発達障害児・者支援について」等の発行およびウェブサイトを通じた情報発信

 弊所では以前(東日本大震災後)より、災害時の発達障害児・者支援に関する情報を発信してきました。被災地における発達障害のある人やご家族の生活にはさまざまな困難があることから、発達障害児・者への理解と対応のコツなどをコンパクトにまとめたリーフレットを掲載しています。

 これまでも災害発生時には被災地の発達障害者支援センターと連携し、被災地版のリーフレットを発行してきました。今年1月の能登半島地震を受け、【石川県版】と【富山県版】を速やかに作成してウェブサイトに掲載すると共に、石川県の発達障害者支援センターに現物を郵送しました。石川県の発達障害者支援センターでは、被災地を訪問する際にリーフレットを持参し、必要に応じ配布をされたとのことです。

リーフレット「災害時の発達障害児・者支援について」の画像です

 また、災害時の支援に役立つ資料として過去の厚労科研成果物より「被災時の知的・発達障害者の支援―医療関係者にできること―」を改めて取り上げ、ウェブサイトより周知しました。なお、「発達障害ナビポータル」ではこれらの情報の他にも、当事者・家族向け情報検索ツール「ココみて(KOKOMITE)」の中で、<災害など大変なことが起こったら>というカテゴリーを設けて自治体等の取り組み情報を紹介しています。

2 被災地の状況把握

 大規模な災害発生時には、厚労省の地域生活・発達障害者支援室に窓口を一本化し、被災地の行政担当課や発達障害者支援センターを通じて、現地の発達障害児・者の状況把握を行います。能登半島地震の際も、同様の体制を取った上で弊所として必要な対応を行いました。

 2月下旬には現地の発達障害者支援センターからの要望もあり、所員が訪問して当事者らの置かれていた状況等について情報収集しました。聴取した内容の一部を紹介します。

  • 被害の大きかった地域の利用者のほとんどが避難所には行かず、車中泊や半壊の自宅で過ごしていた。避難所に登録してないために物資をもらえなかったというケースもあった。
  • 複数の保護者から、「避難所で特別な配慮(パニック時の個別スペース等)を望むと、周囲からの批判対象となる。それならば車中泊で我が子に叩かれるのを我慢する方が良い」「周囲に迷惑をかけてはいけないと思っている」等の声があった。
  • 親子ともに発達障害の特性のある世帯で、適切な援助要請ができないまま、数日間、何も口にしていないというケースもあった。
  • 成人当事者は、睡眠障害など心身の不調を来すケースが増えている。ネットやSNSでのネガティブな書き込み等を目にして精神的ダメージを受けている方々もいる。
  • 今回は、地域の親の会やペアレント・メンター※とのネットワークが活きた。日頃からの連携と信頼関係構築の重要性を改めて感じている。
    (※ペアレント・メンターとは・・・発達発達障害のある子どもを育てる先輩保護者が、その育児経験を生かし、同じ親の立場から子育てで悩みを抱える保護者の相談役となるもの)

 発達障害児・者の中には、知的障害を伴わず手帳を所持していない方々も多数いますので、災害時に支援を要しても自治体が把握できない場合があります。そのような方々にいかに対応していくのか、各地での検討と備えが急がれることを実感しました。

3 作業部会の設置(「災害時における発達障害児・者支援に関する情報発信ー【当事者・家族向け版】リーフレット作成に向けてー」)

 上述したように弊所ではこれまでリーフレット発行等に取り組んできましたが、当事者に直接読んでもらうことを想定した内容や、できるだけ平易なことばで書かれたリーフレットを希望する声もありました。また、災害発生からの日数経過に伴い支援ニーズも変化することを踏まえると、段階に応じた情報発信が必要となります。そのような情報の内容を検討するには、被災地での支援経験のある関係機関等の知見が参考になると考えられ、今年度より、作業部会(発達障害情報分析会議)を立ち上げて取り組むこととなりました。9月に第1回作業部会を開催し、平時からの備えの重要性も含めた意見交換が始まったところです。今後は、当事者団体や関係機関等からのヒアリングも行い、有用な情報や発信方法についての検討を重ねて、情報発信のさらなる充実につとめてまいります。