コクリハニュース

第375号(令和6年秋号)特集

特集2『障害者に関する防災・災害への取り組み』

福岡視力障害センターの防災への取り組み~今津福祉村の地域防災~

自立支援局 福岡視力障害センター 庶務課長 稲葉 幹人

 当福岡視力障害センターが所在する福岡市西区今津には、「今津福祉村」(以下、福祉村)という地域活動組織があります。福祉村は当センター初代所長の発案により昭和45年に設立され、「施設等の利用者に開かれた福祉の村」という意味と、「地域住民の福祉を推進する村」という二つの意味が込められています。

 当時の日本は高度経済成長期であり、多くの地域社会が工業開発や観光開発等によって、その姿を大きく変貌させていく時代でした。そんな中、ここ今津地域では、住民と施設が一体となって福祉のまちづくりを推進することを目的とした「夢とふれあいのふるさとづくり」という合い言葉のもとに、福祉村は誕生しました。以来、50年以上にわたって地域住民と施設が一体となり、夏祭りや文化祭、運動会、球技大会、清掃活動、研修会や講習会等々、多様な交流活動が活発に展開されてきたのです。

 しかし、近年では、特に施設側では以前のような活発な活動は困難となってきています。そのため、福祉村の活動についても、その方向性や内容を見直していく時期に来ていました。

 そこで、時代にあった新たな取り組みとして、今年の1月に当センターの発案により、福祉施設等により組織される福祉村施設部会(12施設が参加)において「防災検討会」を立ち上げ、検討を開始しました。まず、はじめに各施設における防災対策の現状や課題、今後の希望等に関するアンケート調査を実施しました。その結果、各施設の意識等は、予想以上にバラつきがあることがわかりました。施設部会には、地域の中核病院等もあれば、小規模な児童施設や特別支援学校など多様な施設が含まれています。このように事業内容や施設規模、災害時に必要となる支援等もかなり異なる施設群であるため、個々の施設のおかれた状況の違いを反映した結果となりました。

 そのような状況ではありますが、まずは出来ることから第一歩を踏み出していきたいと考え、「施設間の緊急連絡体制をどのように構築していくか?」をテーマに、その具体的な方法についての議論や検討を行っているところです。さらに今後は、災害発生時の地域住民との協力体制のあり方や、施設の役割の明確化などについても検討を進めていきたいと考えています。

 また、将来的には、当施設を、災害発生時に中核的な役割を果たす施設として位置づけていく方向も検討しなければなりません。というのも、当施設は、国立施設としての立場もあり、またこの地域では特に水害等に対してはリスクが低いこと、近隣ではほかにない非常に堅牢な建築でかつ規模が大きい施設であること等、中核施設としての役割を果たせる要素を備えているからです。そのためには、まだまだ必要な施設設備・物品等の整備に必要となる予算の確保、他施設との協力体制の構築等が必要となってきますので、今後とも長期的な視点で地域防災の取り組みを進めていきたいと考えています。