第376号(令和7年秋号)特集
大阪・関西万博の出展について
研究所、支援機器イノベーション情報・支援室
はじめに
国リハは、6月21日から6月29日まで、大阪・関西万博において、大阪・関西万博の公式イベントである「HEALTH DESIGN 輝き、生きる。Live Brighter」に出展し、盛況のうちに終了しました。
今回の特集は、国リハの出展について、担当部署の職員から振り返っていただく企画としました。
○障害者自立支援機器 ~「つなぐ」テクノロジー~
「HEALTH DESIGN 輝き、生きる。Live Brighter」は、厚生労働省、経済産業省が関係する医療福祉関係の最先端の取り組みを集め、展示と体験を中心としたイベントとして開催されたものです。再生医療から、医療・介護情報の活用、手術ロボット、介護ロボット等、日本から世界に向けて発信すべき内容が8つのエリアに分かれて、展示されました。
その中で、当センターは“障害者自立支援機器~「つなぐ」テクノロジー”と題して、障害のある方々に役立つ自立支援機器に関する4つの取り組みを展示しました。ここでは、重度の障害のある方々及び未来を担うこども達に焦点をあて、人と支援機器がつながることで、手と手、人と人、人と社会、そして今と未来がさりげなく「つながっていく」。それにより一人ひとりの生きる力を活かし、社会で最大限の活躍をすることで、社会に自然に溶け込んでいく。そんな未来を想起することを目指しました。実際に展示したのは以下の4つです。
1.眼球運動を活用したスイッチ入力システム
筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経難病により全身の筋力が低下し、眼球運動がかろうじて可能な方を対象として、その限られた意思の表出を画像処理の技術により確実に捉え、ナースコールや音声出力型コミュニケーション支援機器等につなげることで意思疎通を可能とするシステムです。万博では、眼の動きで、スマートボールやルーレット、ピタゴラスイッチばりのデモ(図1)を来場者の皆さんに体験していただきました。
図1 ピタゴラスイッチばりのデモ
2.ジェスチャー認識を活用したインターフェース
脳性麻痺の方や進行性の神経・筋疾患の方など重度運動機能障害者などを対象に簡易なジェスチャー(意図的な動作)により情報機器(パソコンや家電用リモコンなど)の操作を可能とするインターフェースシステムです。市販の距離画像センサ(3次元カメラ)を利用して非接触、非拘束で機器の操作を可能とします。万博では、研究にご協力頂いている障害当事者の方に会場までいらしていただき、来場者の方々とテレビゲームの対戦(図2)をしていただいたり、東京の障害当事者の方とオンラインでゲーム対戦をしていただいたりと、とても盛り上がっていました。
図2 障害当事者の方とゲーム対戦
3.遠隔就労支援ロボット
重度の障害のある方々が、自宅のベッドや車椅子上から、離れた場所にある介護施設に設置したロボットを操作することで、物品搬送や利用者とのコミュニケーションを可能とするシステムです。万博では来場者の方々に、ロボットを操作してカゴに入ったミャクミャクを手元まで持ってくる作業の体験(図3)をしていただき、感想等のメッセージをワッペンに書いて、ロボットに貼って頂きました。ロボットとの記念撮影もしていただき、体験された方々はとても喜んでいられました。また、研究に協力いただいている障害当事者の方に会場にいらしていただき、その方と来場者の方との協働作業でミャクミャクを運んでいただく体験も実施しました。
図3 遠隔支援ロボットを体験する一般入場者
4.こどもの義手の普及に向けた取組
先天性上肢形成不全で生まれ、義手を必要とする「こどもたち」の現況を知っていただくことを目的として、本人たちが義手を自由に使えるようになるまでのプロセスをまとめたビデオの展示と、電動義手、能動義手の模擬体験(図4)を行いました。義手の模擬体験には、毎回長蛇の列ができ、とても盛況なコーナーになりました。
図4 義手体験をする一般来場者
会場は、大屋根リングの西側に位置するEXPOメッセ「WASSE」で開催され、地下鉄の駅がある東ゲートからは一番離れた場所だったので、当初、来場者がいるかどうか心配でしたが、初日は約3,000人、期間を通して12,000人ほどの方々が当センターのブースに来られて、多くの方に自立支援機器の体験や障害のある方がこのような機器を活用することでいろいろなことができるようになるというお話しを聞いて頂くことができました。「すごいですね」、「こういった機器は、とても重要ですね」といったお声も多く頂き、改めて当センターで取り組んでいる事の大切さを知るとても良い機会になりました。

出展会場WASSE(左)と大屋根リング(右)
また、伊藤万博担当大臣や岸田元総理大臣、その他国会議員、地方自治体の首長などの方々にもおいでいただき、機器の体験などもして頂くことができました。(図5)国リハのプレゼンスを上げることにもつながったと実感しています。

図5 岸田元総理大臣に説明をする当センター職員
最後の2日間には、芳賀総長、仲村病院長にもお越しいただき、ブース内での説明役も担って頂きました。研究所、企画・情報部、病院、自立支援局、厚生労働省の施設管理室と、部門横断的に実施した取り組みで、苦難も多くありましたが、センターが一つになってこのビッグイベントを成し遂げることができ、当センターのポテンシャルの底上げにもつながったものと確信しています。
おわりに
現在、万博レガシーとして、国際福祉機器展への出展や、自立支援局でのデモンストレーション、業績発表会での複数の部署からの成果報告、企業との連携など、その波及効果も出てきています。眼球運動を活用したスイッチ入力システムは、グッドデザイン賞を受賞しました。今後につなげる取り組みのアイデアなどがございましたら、ご提案いただけると助かります。


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