第377号(令和8年春号)特集2
頚髄損傷者の自動車と運転補助装置の選び方
自立支援局第二自立訓練部肢体機能訓練課
自動車訓練室 小林 秀信
はじめに
当センターの自動車訓練室(以下当室)は、身体に障害のある方を対象に自動車の運転訓練を行っている部門になります。訓練は主に、身体に何らかの障害を負われたことによって運転の操作方法が変更になる方や、運転を中断していた方を対象に運転補助装置の装備された訓練車を使用し所内コース、スキッドコース、一般道路などで行っています。
よく「身体に麻痺のある方でも運転ができるの」とご質問を受けますが、その方の身体状態に合った自動車と運転補助装置を選択すれば、麻痺があっても自動車の運転が行える可能性があります。今回は、頚髄損傷者が自動車と運転補助装置を選択するうえで大切なポイントをご紹介します。
1.自動車の選択
選択した車種がその人の運転免許の条件や、運動機能に適しているかを確認することが大切になるため、自動車販売店などでできるだけ実車を用いて以下の点が可能か確認することをお勧めします。
①乗降、②エンジンを始動し停止した状態でハンドルを左と右へ全量回す操作、③運転席の調節、④車内への車椅子の積み込み、⑤運転姿勢の保持、⑥シートベルトの着脱、⑦チェンジレバー・駐車ブレーキの操作、⑧車内外からのドアの開閉を確認します。
特に、①から④については改造での対応が困難なことから、事前にしっかり実車で確認する必要があります。それ以外の項目は、運転補助装置を用いることで操作が行える可能性があります。詳しくは、当室で作成したYouTube動画「障害のある方の運転操作力評価」をご覧下さい。
2.運転補助装置
多くの自動車メーカーは、運転補助装置の販売や取り付けを行っていません。一部の自動車メーカーではオリジナルの装置の作製及び取り付けを行っていますが、取り付け可能な車種が限定されることから、運転補助装置を使用する場合は専業の改造メーカーで作製及び取り付けを行うのが一般的です。
①手動装置(アクセル・ブレーキ)
下肢でアクセルペダル、ブレーキペダルの操作が困難な方は、主に左手で「手動装置」を使用し操作します。アクセル・ブレーキ操作以外にウインカー、ホーンなどの操作が可能で、手指機能に合わせたカスタマイズがある程度可能です。
②アクセル・ブレーキ誤操作防止装置
手動装置を取り付けた自動車であっても、既存のアクセルペダルとブレーキペダルは作動する構造となっているため、誤操作を防ぐためペダルを踏めないようにする改造を行うことをお勧めします。
③ハンドル旋回装置
主に左手で手動装置を操作するため、右手でハンドル旋回装置(以下旋回装置)を使用しハンドル操作を行います。旋回装置は握力の強さに応じて選択することが重要です。握力がある方は、衝突事故時などに、装置に顔などを強打する可能性があるためなるべく長さが短い、ノブ型や横棒型を選択することをお勧めします。握力が弱い方は、掌を装置に挿入する手掌型(しゅしょうがた)を使用しますが、マジックテープで旋回装置に手を固定するタイプは、
エアバッグ展開時に手が外れないことで怪我を負う可能性があるためできるだけ使用を避けることが望ましいです。
その他にも、それぞれの身体状態に応じて必要な運転補助装置が変わってきますので、詳しくは、当室で作成したYouTube動画「頚髄損傷者の運転補助装置の選び方」をご覧下さい。
障害のある方が自動車を運転する際は、それぞれの身体状態や障害レベルに合った自動車と運転補助装置を選択し、適切な操作方法を習得したうえで運転すると安全です。


写真1:所内コースでの訓練の様子 装置が備わった訓練車
写真2:手動装置、旋回
参考動画
「障害のある方の運転操作力評価」
https://www.youtube.com/watch?v=6BHpRYS8n28
「頚髄損傷者の運転補助装置の選び方」
https://www.youtube.com/watch?v=cEnPbSawp4w


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