外傷性脳損傷者と脳血管障害者における退所後の就業状況

更生訓練所 指導部 指導課


小松原 正道


【はじめに】
 当センター更生訓練所開所以来、これまでに入所をした外傷性脳損傷者については、現在、指導部各課にて調査中であるが、 ここでは、平成10年に行われた修了者実態調査の調査票のうち外傷性脳損傷者と脳血管障害者を追跡調査することにより、 修了後の就業状況を概観する。

【対象者】
 当センター更生訓練所創設年の昭和54年から平成11年までの間に一般リハビリテーション課程に入所した外傷性脳損傷者128名(男109名、女19名)と、 脳血管障害者162名(男127名、女35名)のうち、平成10年1月10日現在で行われた修了者実態調査において調査票のある者を対象とした。
 診断名は入所申請書類の機能診断書と国リハ医師の所見により決定し、調査項目については、実態調査票記入内容と、訓練所属、麻痺側、復帰形態等を入所者台帳、 ケースファイル記録、および入所者情報システムより集めた。
追跡調査対象者は、外傷性脳損傷者41名(男31名、女10名)、脳血管障害者61名(男48名、女13名)であった。(以下TBI、CVAとする)

【結果および考察】
 男女比には、両群間で差が無く、障害発生年齢の平均は、TBIおよびCVAでそれぞれ18.4歳と25.6歳、調査時年齢の平均は、それぞれ31.0歳と 38.3歳であった。身障手帳取得者の等級分布はTBI、CVAとも類似しており、身障手帳2級の取得者が50%を越えていた。 修了時帰結と追跡調査時就労状況との比較では、正規就労と臨時・嘱託職員の合計が若干減り、家庭復帰に移行していた。職リハ修了者の調査時の正規就労と臨時・ 嘱託職員の合計は、TBIとCVAでは各々が66.7%と75.8%であり、職能修了者では、それぞれ36.4%と31.2%であった。 麻痺側と就業状況との関係では、正規就労と臨時・嘱託職員の合計は、CVA右麻痺51.4%、左麻痺66.7%、TBI右麻痺57.2%、左麻痺84.1%で あった。また、TBI+CVAで、車の免許取得と麻痺側を比較したところ、右麻痺48.9%、左麻痺82.9%であった。 何らかの公的年金の受給の有無と身障手帳等級との関係については、年金受給者(TBI+CVA)は、身障手帳1,2級の者で86.8%であり、 年金なしの者に身障手帳1級の者はいなかった。今後は、調査客体以外の実態調査票のない一般リハビリテーション課程に入所した外傷性脳損傷者、 脳血管障害者との比較検討も行っていきたい。




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