当センターにおける人工内耳装用者の実状

病院 第二機能回復訓練部
病院 診療部 耳鼻咽喉科
学院
美留町美希子 ・立石恒雄・田内光
設楽仁一
中村公枝

【はじめに】
 聴覚障害が重度のため、補聴器を装用しても効果が極めて乏しい難聴者に対し、 当センターでは平成4年から平成11年まで、人工内耳(コクレア社製ミニシステム22) 埋め込み手術の施行およびリハビリテーションを行ってきたが、平成12年からは、 従来の箱形だけでなく耳掛け形のプロセッサが選択できる新しい人工内耳 (コクレア社製Nucleus24)が保険適応となった。 ここでは、本年Nucleus24の埋め込み手術をおよび音入れを当センターで実施した 人工内耳装用者の実状について報告する。

【症例】
 本年3月から9月までにNucleus24の埋め込み手術および音入れを実施した12例 (男3例、女9例、3歳〜66歳、失聴期間3年〜38年)で、術後3ヶ月〜8ヶ月が 経過した重度難聴者を対象とした。失聴原因は、生まれつき重度の難聴であった者 5例、言語獲得前の1歳2ヶ月時に髄膜炎で失聴した者1例、6歳時に原因不明で 失聴した者1例、生まれつきの難聴があり成人になってから失聴かつ失明した者1例 、6歳時に薬物投与で聴力が悪化し出産時に失聴した者1例、成人するまでは正常 聴力でその後何らかの原因で失聴した者3例と多様である。 平均聴力レベルはすべての症例で100dBを超えていた。

【方法】
 術前の補聴器使用時および術後のNucleus24使用時の、矯正聴力、単音節の語音聴取能 (57S語表)、Closed Setでの1/20選択の単語聴取能(67語表)、Open Setでの2音節単語 聴取能、3音節単語聴取能および日常生活文聴取能(TY-89)を測定した。ことばを用いた 検査ができない幼児については、他の評価法あるいは行動観察法により評価した。

【結果】
 術後の矯正聴力は全症例で改善し、症例12以外はすべて50dB以内であった。単音節聴 取能は0〜10%が30〜52%に、1/20選択単語聴取能は0〜85%が95〜100%に、2音節 単語聴取能は0〜20%が16〜68%に、3音節単語聴取能は0〜28%が30〜68%に改善した。 日常生活文の聴取能は4例中3例で改善がみられた。また、幼少児では、様々な音に気付く、 音の数や長短がわかる、音声が出やすくなる、読話なしで簡単な言語が理解できる、 いくつかの子音がでるなどの効果が確認された。症例12は∫音やs音が聴こえていること が確認され、実際の矯正聴力は検査結果の65dBよりも良好と推測された。

【まとめ】
 Nucleus24を装用してから8ヶ月以内の12症例すべてにおいて、補聴器では期待できない 矯正聴力あるいはことばや環境音の聴取についての改善がみられた。




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