聴覚障害者の「自己発生音」に対する意識調査

更生訓練所 指導部 指導課
更生訓練所
病院 第二機能回復訓練部
森本行雄・菅原美杉・ 会田孝行
佐藤徳太郎
田内光

【はじめに】
 家の内外などでのさまざまな生活活動に伴って発生する音(自己発生音)は、 時には他の人に不快感を与えたり、気がつかないうちに周囲に迷惑をかけて しまったりすることがある。特に、聴覚障害者の場合には音が聞きとりにくい、 または聞こえないため、どの程度の大きさの音なのかを判断しにくく、日常生活 において不安に感じていることがある。そこで「自己発生音」の大きさをどの ように認識しているか、どのような場面における「自己発生音」に対して不安 を感じ、その大きさの程度を知りたいと思っているのかなど、「自己発生音」 に対する意識調査を実施した。

【対象者と方法】
 聴覚障害入所者38名に、質問用紙を配布し個別に記入することを依頼した。 平均年齢22.9歳(18〜37歳)、聴力レベルでは、100dB以上の身体障害者手帳1級または 2級を所持している者が31名、聴力障害発症時期は先天性または10歳以下の者が34名で あった。補聴器を利用している者が34名と、その利用度は高かった。

【調査結果】
 補聴器の利用度は高いが、障害状況及び回答結果からも全ての音を聞き取れているわけ ではなく、日常生活において38名中15名(39.5%)が、「自己発生音」に対して気をつか いながら生活していると回答していた。26名以上が大きな音であると答えていたものは、 掃除機、車・バイクのエンジン音、クラクション音、机をたたいて人を呼ぶ音であった。 また、車・バイクのエンジン音及びクラクション音、補聴器のハウリング音、テレビの音、 CDラジカセの音、子供及び犬の泣き声、自分の声、人を呼ぶ声などには10名以上の者が 不安であると答えていた。不安がある音のほとんどについては、10名以上がその大きさ の程度を知りたいと回答していた。このことから、不安に感じるからこそ大きさの程度 を知りたいという気持ちがあることが伺えた。

【まとめ】
 音のとらえ方は、環境条件などで変わると思われるが、調査結果からも不安に感じる面 が多くあることがわかる。聴覚障害入所者が、修了後に社会生活を送る上で、その不安が 少しでも軽減し、円満な社会生活を送ることができるよう騒音測定器等を利用した指導・ 訓練内容を検討していきたい。
 また、今後聴覚障害者団体会員や病院患者になどについても、幅広くデータを収集して いく予定である。




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