病院 第二機能回復訓練部
焼津市立総合病院 リハビリテーション科 |
餅田亜希子
・白坂康俊・三刀屋由華
大内田葉子・大畠康代 松本みき |
【はじめに】
介護保険は介護の必要度(要介護度)に応じて介護サービスを提供する制度である。
要介護度は障害者のADLおよびIADLを身体機能面を中心に評価している。しかし、身体
の機能障害が軽度であっても言語障害が重度であれば、電話は使用できず、買い物も
不自由で、交通手段の利用も制限される。その結果、自立は制限され、介護の必要性
は高くなる。しかし、現在の介護保険では言語障害の評価は充分になされず、言語
障害者が適正なサービスが受けられない恐れがある。我々は介護保険制度の実施を
控えた昨年度、言語障害者の要介護度認定のシミュレーションを行い、言語障害者
の評価および提供されるサービスを検証した。
【方法】
脳血管疾患による失語症または運動障害性構音障害をもつ40歳以上の男性9名と
家族に対して、要介護度認定調査票にそって面接調査を行った。調査結果に基づき
要介護度一次判定用ソフトを用いて要介護度を算出し、「要支援」以上に判定された
対象者について、「MDS−HC」によりケアプランを作成した。さらに「MDS−HC」の
ADLおよびIADL項目について、言語障害がもたらす問題に配慮したうえで、要介護度
を算出した。
【結果と考察】
言語障害に配慮した場合、そうでない場合に比べて要介護度はより重度に評価される
傾向があった。その理由としては、調査票の問題と判定するソフトの問題が考えられた。
また、ケアプラン作成において、現在の介護保険の範囲では、言語障害者に充分なサー
ビスが提供できない可能性が示唆された。
1)要介護度認定調査票:意思伝達や指示への反応の評価において、言語力の問題が充分
評価されていなかった。また、文字言語によるコミュニケーションに関係する視野、
視覚認知が適切に把握され難い可能性があった。
2)要介護度一次判定ソフト:一次判定ソフトの樹形モデルでは、構造上言語障害者の
問題点が低く算出されることが認められた。
3)ケアプラン:「MDS−HC」のアセスメントでは、言語障害者への必要なサービスが
充分に拾えない可能性があった。また、介護保険では、訪問STなどはサービスに含まれて
おらず、必要性が認識されてもサービスを提供できない場合があることが分かった。
【まとめ】
IADLの阻害要因にもなる言語障害が、介護保険では、要介護度の判定やサービス提供に
反映され難いことが分かった。