クリーニング作業訓練において一般就労に結びついた視覚障害者の事例報告

更生訓練所 職能部


若林耕司 ・吉田喜三


【はじめに】
 今回、視覚障害ではあるが聴力障害を併せ持ち、また社会経験も未熟なため、 将来の方向性を見いだせないまま、当センターに入所し、生活訓練課を経て 職能訓練課(約1年10ヶ月)のクリーニング訓練後、就労に結びついた事例 について報告する。

【ケース紹介】
 A氏 22才 男性 (視覚障害:右光覚弁、左0.07(0.1)、 視野右測定不能、左約30°、左耳聴力障害、その他先天性の歩行障害)

【職能評価】
 1)訓練室内では、やや体を傾けた歩行の仕方であったが障害物を避けて移動は 十分可能であった。技術的にはシワの見落としがあった。
 2)指示については聞き返しが多かったが、理解できれば手順等も正確に理解し行動にうつせた。
 3)対応の仕方において幼稚的なところが見られた。

 当面は、一般就労は難しく福祉施設におけるクリーニングの仕事場に入ることを目標に訓練開始。


【訓練経過】

 1)作業に関するもの
アイロン、プレス等の基本的なクリーニング技術は時間をかけることで習得していった。 また、シミやシワの見落としについては、特に、手の感触でシミやシワが出来やすい部分を 繰り返し確認させるとともにシワをつくりにくい仕上げ方を習得させた。照明が暗いという 訴えありスポットライトで対応した。
 さらに、日頃、他者と協力する姿勢がなく、連携作業を通じて他者との協力の仕方を身に つけさせた。何事にも過剰に反応しトラブルになることがあり、その都度、周囲の状況を よく確認するよう繰り返し指導した。
 2)実習に関するもの
 訓練約1年経過後に就職を目的に職場実習(2週間)したが体力面の心配と速度が 遅いことから不採用、この2点を中心に運動療法士の時間外の体力増強の指導等も得なが ら訓練し、6カ月後再度就職に向けて同じ場所で職場実習(2週間)し採用された。

【おわりに】
 当初、知的に低いことからコミュニケーション面が難しいと思われていたが、聴力障害 からくる聞き取りずらさと、社会経験未熟な面の問題も含んでいた。特に、訓練中に社会性 の面での観察項目が多く、クリーニング訓練における集団作業を通じてコミュニケーション の取り方等を経験させた。すでに修了後の3カ月目の後指導を終わっているが、引き続き、 定着のための支援をしていきたい。




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