国立秩父学園
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高畠妙子
・入江ゆみ子
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【はじめに】
当園は知的障害児の入所施設で、現在76名が入園している(うち、20歳未満は17名)。
日常の生活支援の中で、自閉群については行動の意味は汲み取られないまま対
応され、関係が増悪し、結果的に問題行動が形成されている現状が多いことが推察さ
れる。そこで今回、自閉群の問題行動について職員にアンケートを実施、第1段階で
日常生活支援の中で問題と思われる行動とその理由、第2段階でMASを使用、問題行
動の機能評定を行い、SMの意志交換レベルから、支援に科学的な視点を持つことの重
要性について検討したので、まとめ、報告する。
【方法】
1)対象児・者:自閉症、もしくは自閉症の疑いのある男女28名。年齢12歳〜34歳、SM
社会生活能力検査の意志交換のレベルは10ヶ月〜4歳9ヶ月。
2)アンケート:第1段階は問題と思われる行動とその理由を自由記述、第2段階は
MAS。記入は当該寮寮長。
3)分析方法:問題行動は厚生省強度行動障害基準表に記載されている項目に限定し
た。分析可能な行動数は16で、@問題行動の同定率、A問題行動の意味の同定率を算出
した。
【結果】
@問題行動の同定率:両アンケートで最も問題度が高いとされた行動の一致率は、破
壊行動100%、奇声100%、他害88%、自傷行動60%、こだわり33%。
A問題行動の意味の同定率:両アンケートから問題行動の意味理解の同定率は、破壊
行動100%、他害50%、自傷行動33%、奇声0%、こだわり0%。
B問題行動の機能評定:自由記述は「その他(精神的に不安定だから、嫌がらせ、理
由が分からない等)」88%、「要求が満たされない」43%、「逃避」6%だが、MASでは
「要求」75%、「逃避」43%となる。
CSMの意志交換レベル:他害・自傷行動が多く見られるのは、2歳以上の群。
【考察】
1)結果@、Aより、問題行動の影響が他者に及ぶ行動は同定率及び意味の同定率と
も高くなり、利用者本人に及ぶ行動は低くなる傾向にある。
2)結果B、Cより、2歳以上の群で他害・自傷行動が多くなるのは、コミュニケー
ション行動(他者への要求、所有欲求など)がより活発になる反面、自由記述で見られ
るように機能の評定が曖昧なまま対応している為と考えられる。
【まとめ】
今回、限定枠からは外したが、第1段階のアンケートでは「尿失禁」「精神的落ち
込み」等が問題行動として挙げられるなど、問題行動の定義付けの曖昧さがみられ
た。また、第2段階の同定率のばらつきから、自閉群については現象の背景にある行
動の意味が理解されないことで、対応の初歩の段階で関係のズレが生じ、結果、不適
応行動を増長・増悪させるのではないかと推察される。従って、問題行動はまず定義
され、その行動の意味を機能として捉えるなどの支援に対する科学的な視点を持つこ
とが必要だと考えられる。