身体障害者のX線撮影 被ばく低減の試み

病院 診療部 研究検査科 診療放射線技師


肥沼武司 ・前野正登・山本秀昭


【はじめに】
 患者さんが受ける放射線被ばく線量の低減は、私たち診療放射線技師の果たすべき役割の1つであり、 さまざまな分野で放射線被ばくを低減する努力がなされている。
 一般的に身体障害者は、受傷または発症後からリハビリテーションに至るまでの間に数多くの放射線 に関連する検査などを受けており、その放射線による被ばく線量は人体に悪影響を及ぼすほどの量では ないと推定されるものの、比較的多くの医療被ばくにさらされて来たと思われる。
 私たちは、リハビリテーションセンターに導入されたCRシステム(Cmputed Radiography System) の特性を利用し、身体障害者のX線検査時の被ばく線量低減を可能とすることが出来たので報告する。

【目的】
 X線検査は、大別すると、・フィルムに直接写し出すアナログ撮影、・イメージングプレート( 以下:IP)と呼ばれる板にX線を照射後コンピュータに取り込み画像処理をおこない画像化する デジタル法の2つのシステムに分ける事が出来る。当センターは後者にあたり一般的にCR撮影 と呼ばれている。
 CR撮影の特徴は撮影した画像を様々なパターンに画像処理が行える点である。理論的には撮影された 画像は1つのデータであることから、通常より被ばく線量を低く抑えた撮影でも、IPが撮影データを受け 取っていれば通常のX線写真として出力が可能である。
 実際はいくつかの要因があり画質の向上を目的とした写真は困難であるが、X線線質の特徴を利用 することで被ばく線量を抑え、CR撮影ならではの画像処理を行うことで従来の画質を保持することは 可能と考え本実験を行った。

【方法】
 使用装置及び機器は、X線発生装置はPhilips社製。画像処理装置はコニカREGIUS。
 撮影は各電圧を変えてIPに到達する線量を同一にして行った。
 ・アルミステップを撮影した写真の輝度(濃度)を測定して特性曲線を作成。 ・バーガーファントムによる視覚的評価。・付加フィルターによる線量の違いを測定した。

【結果及び考察】
 X線は撮影条件のうち管電圧を上げることで被写体を透過する線量が増える。 IPに到達する線量が同じであれば、表面にうける線量は高電圧になるほど少なくなった。
 特性曲線は管電圧を上げると滑らかになり画像のメリハリを失う傾向を示した。 しかしながら画像処理を行うことで低電圧と同様なコントラストを描いた。
 視覚的評価によるコントラスト結果は、画像処理してない写真に対して優れた 画質とは言えない評価であるが、画像処理を行った写真は従来の画質と同程度の 評価を得られた。
 付加フィルターは低エネルギー成分のX線をカットすることが可能で最大43%の 被ばく線量を抑えることができた。しかし到達するX線もカットされるため IPの情報量を補うことになり撮影時間は延びてしまう。撮影時間が延びると体動 などによるブレた写真になりやすく、撮影時間は短いほうが望ましい。しかし ながら高電圧の撮影時間と従来の電圧で行った撮影時間比較するとフィルターを 用いたとしても充分高圧撮影の撮影時間は短いため、従来の撮影条件より動きに よるブレが発生は少ない結果であった。

【まとめ】
 以上の結果を考慮して当センターのX線検査は管電圧を上げた撮影条件に変更。 従来の被ばく線量より半分近く低減が可能であった。全国的にみても当センター の患者被ばく線量は低い数値を示した。
 また画像処理より従来の画質を保持出来る事から本実験は有効であると考えた。




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