研究所 障害工学研究部
京都第一科学 |
外山滋・
大出明
・碇山義人
佐藤義治 |
わが国の糖尿病患者は560万人と言われている。その中で、インシュリン投与を要する患者も多く、
そのような人々の場合はその適正量を決定する必要があり、これを誤ると大変に危険なことになる。
特に低血糖に至った場合には迅速に対処しなければ生命に危険が及ぶので、血糖値の監視は不可欠である。
ところが従来の簡易型血糖計では、血糖値が視覚的に表示されるので、糖尿病性網膜症患者は測定結果
を自分自身で知ることができず、他者の助けが必要とされた。
そこで、国リハ研究所では糖尿病性網膜症患者が一人で血糖値を測定し、その結果を知ることができる
ようにするために、音声化血糖値センサの開発に取り組んだ。その後、財団法人テクノエイド協会の助成
を受け、松下電器産業、アートロニクス株式会社、京都第一科学などの協力のもとに高機能化、小型化に
取り組んできた。このプロジェクトの成果として、音声化血糖計専用のカスタムLSIを使用することで通常
の血糖計の3倍程度の体積の音声化血糖計を開発することができた。
さらに、このプロジェクトの後、京都第一科学や松下電器産業のもとでさらに改良が繰り返され、平成
12年4月に市販に至った。網膜症患者が個人的に入手することも可能である。この市販化された装置自身
は音声化モジュール(商品名:プラストーク)として血糖計にオプションとして取り付けるようになっている。
機能的にはプロジェクトで開発した物とほぼ同等であるが、デザイン上は手で持ちやすいようにさらに洗練
されたものとなった。本装置の主な使用を以下に示す。
音声機能: 測定結果、日時、バッテリーアラーム、エラーメッセージ
音量: 音声のみ16段階調節(音声OFFを含む)、イヤホン端子付き
電源: カメラ用リチウム電池(3V)1個使用、約1000回測定可能
外形寸法:123.5 x 61.5 x 24.0 mm
重量:約60g(血糖計を含めると120g)
なお、血糖計自身も改良がなされており、時計機能の他、プリンターへの接続、パソコンへの接続による
データ管理などが可能になっている。音声化モジュールにはジョグボタンが取り付けられており、時計の修正など、
音声のガイドで行うことができる。