国リハセンターにおける重度脳性まひ者に対するシーティング適合評価事例

研究所



病院

所沢キャンバス
塚田 敦史 ・廣瀬 秀行・井上 剛伸
高橋 功次・岡本  晋・新妻 淳子
中山  剛・三田 友記・石濱 裕樹
青木  慶
岩崎  洋・吉田由美子・伊集 玲子
大塚  進・関  寛之・関  育子
飯田  宏・津嘉山 航

【はじめに】
 当センターでは1998年4月より、車いす等のシーティング適合サービスを開始し、現在に至っている。 本報告では、重度脳性まひ者のシーティング適合の一事例から、ユーザのニーズ、様々な職種と適合作業 の関わりを中心にアプローチ内容を報告する。

【対象者】
 32歳男性で、アテトーゼ型重度脳性まひによる四肢体幹機能障害がある。 本人、家族、通所施設職員から新しい介助形車いすの要望があり受診された。

【ニーズ】
 初期評価(問診)では、ユーザから要求や身体的および生活状況の訴えを聞取る。 適合方針を明確にするための最初の重要な過程である。本事例は、使用環境が自宅と通所施設であり、 介助に関わるご家族や施設職員の使用状況の違いもあって訴えは多く、訴えが無くなるまで問診を続けた。 延べ6回のサービス対応で約2ヶ月を要した。訴えの内容から状況確認が必要な時は訪問調査を行い、3回行われた。
 訴えは,座位を大前提としながらも他の多くも主訴と成り得るものであった。 そのため適合方針の決定に至るまでの過程は、従来の“主訴を明確に”ではなく,訴えからニーズを整理して解決が必須のもの、 可能なものをハード・ソフト両面から“重要性(優先度)と方策を決定”していく過程であった。

【職種の関わり】
 適合方針決定やアプローチに対する評価など、様々な職種が適合作業に関わり,総合的な判断を行う。 本事例において関わった職種ごとの人数と適合作業との関係をまとめた。
理学療法士(PT)は問診、身体評価、座位シミュレーション評価を中心に関わっていた。 義肢装具士(PO)とエンジニア、通所施設職員は、問診以降ほぼすべてのアプローチに関わっていた。 本人は座位上でコミュニケーションエイドを使用しており、包括的な適合の必要性から言語聴覚士(ST)が仮適合評価以降のアプローチに加わっていた。 同時にシーティングスタッフもSTの言語指導に断続的に関わった。

【まとめ】
 本事例でも、ニーズを整理して適合方針を決定していく過程は,適合作業において大きな重要性をもっていた。 これには身体機能、日常生活、機器特性や使用方法など多面的な整理分析が必須であり、 様々な職種の横断的な適合作業の関わりが必要といえる。 




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