研究所 補装具制作部
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岡本晋
・田村徹・小池雅俊
高橋功次 |
電動義手が国内で市販されてから20年以上経過するが、残念ながら普及には至っていない。
我々は過去に義手に関する調査を4回行った。それらの調査結果から、普及しない要因は電動義手が基準の支給対象に採用されていないこと、
機能性、重量、価格、メンテナンス体制及び電動義手に対する関係者の認識・理解不足が上げられている。
今回は、今までの調査結果を踏まえ、電動義手に対する意識調査を上肢切断者に対して行った。義手は切断部位に応じて仕様は異なり、
切断部位が遠位になるほど、また両側よりも片側切断者の方が装飾性の要望が高いので、今回は片側前腕切断者を対象に絞って行った。
方法は、当センター補装具製作部で過去に製作した片側前腕切断者100名を対象に、郵便によるアンケート調査を実施した。
回答者総数は38名。アンケートの内容は「電動義手に対する知識、理解、認識はどの程度あるか」「電動義手使用の意欲はどの程度あるか」
「電動義手使用にあたって、ハード、サービス、制度等の要望・改善点は何か」をポイントにおいて作成、アンケートを分析し、
現状を把握するとともに、現状を改善するには何が必要かを探った。
切断者の電動義手に対する認識、理解は低く、切断者、関係専門職を含めた啓蒙、情報提供が重要であること、
及び初期の処方時に義手選択の一つとして電動義手を組み入れ、試用機会を設けることが重要である。
使用意欲に関する質問では、前腕フック型能動義手、前腕装飾義手、前腕電動義手のそれぞれの説明資料
(写真と重量及び電動義手での使用場面の写真と機能説明)を添付資料として提示した上で答えていただいた。
重そうであるという答えが少し有るが、外観、使い勝手については良い印象を持っており、電動義手の使用意欲は高い。
電動義手の能力と限界を理解すれば、電動義手使用希望者はもっと増えると思われる。
「電動義手の何が改善されれば、もっと広まると思うか」の質問で最も選択の多い項目は、重量及び価格が共に58%、
機能性及び支給制度の整備が共に39%であった。軽量化、低価格化、機能性の向上が望まれると共に支給制度の整備が早急に望まれる。
義手は身体に装着するものであるがゆえに、より一層、試してみる機会を設けることが大変重要と考える。
支給制度へ早急に取り入れ、選択肢の一つとして組み入れること、及び関連専門職、ユーザに対する啓蒙、
情報提供を行っていけば、問題点がより明白となり、かつ改善されていくものと思われる。