研究所
学院 病院 |
三田友記
・中沢公孝
矢野英雄・大石暁一・高嶋孝倫 有薗裕樹 関寛之・牛山武久・菊地崇 岩崎洋 |
【はじめに】
脊髄損傷者に対して身体的・心理的効果などを目的として二足歩行訓練が行われている。最近
では交互歩行装具を用いての歩行訓練が行われ、立位時の安定性や歩行時に要するエネルギー効
率の向上が報告されている。
我々は1999年11月より、研究所・学院・病院からなるプロジェクトチームで、脊髄損傷者に対する歩行
補助装具と歩行能力に関する研究を行ってきた。その研究の中で、脊髄損傷者の立位歩行の可
能性とその健康・体力に及ぼす効果を検討するため、荷重制御式歩行補助装具(Weight Bearing
Control Orthosis 以下WBC)を製作した。今回の発表ではWBCのシステムとその問題点について、
装具メカニズムの改良を目的として報告する。
【WBCのシステム】
WBCは足底に約30mm伸張する脚長可変機構をもつ。その機構により遊脚期における足底と床
とのクリアランスを確保できるため下肢の振出しがスムーズになる。液化炭酸ガスを伸縮のための動力源
とし、使用者の杖に取付けたボタンスイッチで電子制御のもとに操作する。また、交互歩行を行うため装
具背部にて両側の股継手がレシプロコネクティングロッドで連結され、左右の下肢が逆位相になるレシプロ
機構をもつ。下肢の振出しは残存する上体の動き(体幹の後屈)を利用し、レシプロ機構に伝達するこ
とで交互歩行を可能にする。その他に狭い歩隔、リンク股関節による剛性などの特徴的機能を持つ。
【問題点と改良】
@足部あぶみ、リベットの破損: 通常の長下肢装具に用いるアルミ合金製あぶみを鉄製に、銅製リベットを鉄製リベットに改良した。
Aレシプロコネクティングロッドの破損: アルミ合金製パイプをステンレス製中実丸棒に改良した。
B股継手ロック機構の破損: アルミ合金製からステンレス製へ変更した。
@〜Bの問題点については、VICON(3次元動作分析装置+床反力計)による歩行分析の結果
から、足継手・股継手へ非常に大きなトルクが作用していることを確認した。その原因を踏まえ、充
分な強度をもつように部品の材料変更を行った。しかし、強度および剛性が過剰になると重量や
外見、装着性、簡便さに問題が生じる。まさにこれが現在のWBCの問題点であり、今後の改良を
必要とする点である。