脊髄損傷者の荷重制御式装具を用いた歩行分析

学院

研究所
病院
矢野英雄・大石暁一・高嶋孝倫
有薗裕樹
中沢公孝・三田友記
関寛之・牛山武久・菊地崇
岩崎洋

【はじめに】
 今回の報告では交互歩行用装具の一つである荷重制御式装具(Weight Bearing Control Orthosis以下WBC) を用いた交互歩行分析を行う。主として装具の機構により生じる推進力に着目し、他の交互歩行用装具 (Advanced Reciprocating Gait Orthosis以下ARGO)を用いた歩行と比較検討する。

【分析内容】
 WBCにおいては立脚期から遊脚期に移行する際の足底と床面の摩擦を解消する機構(脚長可変機構)があるため、 ARGOと比べ体幹の動きに差が表れるのではないかと考えた。
 そこで、1)前額面における床面から足底を持ち上げるときの動作(持上げ系)と、2)矢状・水平面における 下肢を振り出す時の動作(推進系)に分け、分析を行った。
 また、同時に3)杖への負荷をみることにより上肢帯への影響についても考察を加えた。

【計測方法・対象】
 VICON(三次元動態解析装置)を用いる。これは体表及び装具表面に張り付けたマーカーを12台のCCDカメラで撮影し、 三次元座標化する。また同期した値として床反力を計測し、これらより関節角度変化、杖への荷重負荷率などを算出する。
 なお、対象となる被験者は脊髄損傷者(Th6、Th12の完全麻痺)2名とした。

【結果と考察】
 分析内容の1)については、骨盤の左右動・傾斜角度に着目し、何れもWBCのほうが低い値を示した。 この差はWBCに脚長可変機構があるためと考えられ、さらに左右動に関していえばARGOに比べWBCは歩隔が狭いことがあげられる。
 2)については、体幹の後傾運動に着目した。体幹後傾運動は装具のメカニズム上、下肢推進力に大きく関与している。
 3)については、WBCのほうが杖への荷重負荷率が低かった。 これはWBCのもつ脚長可変機構の変わりにARGOは1)の結果でもみられるように体幹を大きく前屈させ、さらに杖で下肢を持ち上げて離床するからと考えられる。
 今回の歩行分析では、被験者が2名ではあったが、このような結果が得られた。




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