荷重制御式歩行補助装具の訓練に伴う歩行動作の変容

研究所 運動機能系障害研究部


垣花渉 ・中澤公孝・河島則天
谷崎雅志・高嶋孝倫・三田友記
大石曉一・岩崎洋・菊池崇
関寛之・矢野英雄

 脊髄損傷者(SCI)によるトレッドミルや歩行訓練マシーンを用いた擬似歩行や装具歩行では,末梢の感覚受容器が刺激されることによって 脊髄から出力が誘発されて歩行様筋活動が出現すると報告されている。
 本研究では,荷重制御式歩行補助装具(WBC)を装着しての歩行トレーニング時における歩行のキネマティクスやキネティクスを麻痺した 下肢筋群の筋活動とともに調べ、トレーニング経過に伴うキネマティクスやキネティクスの変容と歩行様筋活動との関係を検討した。
 胸椎12番の完全対麻痺者が10週間にわたり装具歩行トレーニングを行った。装具歩行のbiomechanicalな特徴を動作解析システム (VICON 370)を使って測定した。被験者は装具歩行トレーニング初日に独立歩行を獲得したが、麻痺下肢筋群に筋活動は見られなかった。
 トレーニング開始3週目において、被験者の歩行様式に劇的な変化が認められた。すなわち、被験者は立脚相において股関節の伸展動作と 下肢への荷重の両方を大きくすることで歩幅を伸ばし歩行速度を増大させた。このような歩行動作の変容に伴って、立脚相の中盤から後半に かけて両脚のヒラメ筋に筋活動が観測された。トレーニング開始10週目では,股関節の伸展と下肢への荷重がさらに大きくなりヒラメ筋の 筋活動が増大した。立脚相でのヒラメ筋の放電量は股関節伸展の動きや下肢への荷重と有意な相関を示した。
 これらの結果は,脊髄の歩行様出力を誘発するには歩行トレーニングによる股関節伸展の動きおよび下肢への荷重に伴う求心性の入力が 必要であることを示唆している。




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