国リハニュース

第372号(令和5年春号)トピックス

小学校での訪問授業について

自立支援局 第二自立訓練部 肢体機能訓練課 久保田 崇之
新津 貴史
池田 竜士

 令和4年11月30日、所沢市立美原小学校において、体験学習の訪問授業を行いました。この取り組みは、新型コロナウイルスの影響でセンターへの見学などの受け入れが難しくなった3年前より当課が担当しており、コロナ対策を講じた上で、理学療法士2名、運動療法士1名と補助者1名の計4名で授業を行いました。

 対象となる児童は5年生で、午前中に教室や体育館をお借りして3つのブースを準備し、クラス毎に移動をしながら授業を実施しました。ブースは、「車椅子での生活についての講義」、「車椅子介助体験」、「車椅子スポーツ体験」の3つで、約40分ずつの授業を行いました。

 車椅子での生活についての講義では、「障害とは」、「車椅子での生活について」、「パラスポーツについて」などの内容でお話ししました。車椅子からベッドへの乗り移りや食事、整容の方法については、どんな工夫をすれば自分でできるかを児童に考えてもらいました。どのクラスからも様々な意見があり、その発想力に驚かされました。

 また、講義の中では、よりイメージを持ちやすくするために、車椅子での生活やパラスポーツの動画を多く観てもらいました。講義を通じて、障害による不自由さについて考えるとともに、様々な工夫による解決方法を学ぶ良い機会になったのではないかと感じました。

講義風景の写真

 車椅子介助体験は、2人1組で行いました。はじめに、「車椅子はどのような人が使うのか?」、「なぜ使うのか?」、「どのくらいの重さがあるのか?」という質問を投げかけ、クラス全体で意見を出し合い共有してもらいました。実践では、介助する側とされる側の視点を持ってもらいたいと考え、車椅子を押すだけではなく、キャスター(前輪)を上げる課題にも取り組んでもらいました。

 キャスターを上げるとき、「重い~、怖い~」という声が上がり、介助することに一苦労する児童も多く、体全体を使って車椅子をコントロールすること、ならびに介助される側の怖さについて、身をもって感じてもらうことができました。

 また、最後には各クラス代表者に、担任の先生を段差に「上げる」、「降ろす」という難易度の高い課題にチャレンジしてもらいました。今回の体験では、安全にも配慮を行いながら、より実践的な介助体験ができたかと思います。

車椅子介助体験の写真

 車椅子スポーツ体験は体育館で実施し、バスケット用の車椅子で、「30m駆動」、「車椅子鬼ごっこ」、「車椅子サッカー(バランスボールを使用して行う、当センターのリハビリテーション体育の訓練で実施している種目)」を行いました。児童全員に可能な限り多く乗車してもらうことで、車椅子を操作することの難しさを体験してもらうと同時に、車椅子でも楽しくスポーツを行えることを知ってもらえるように授業を展開しました。

 30m駆動では恐る恐る車椅子を漕いでいた児童が、ゲームとなると思うように動けないながらも思い切り漕いで鬼を追いかけたり、ボールを追ったり、何回も参加したいと手を挙げてアピールする児童がいたりと大いに盛り上がり、目的を達成することができたと思います。

車椅子スポーツ体験の写真

 各ブースでの授業を終えた後、最後に全体で集合し、質疑応答を行いました。車椅子に関する質問から、なぜこのような仕事を選んだのか、仕事のやりがいなど、10名近くの児童から途切れることなく質問がありました。

 後日、児童一人一人の感想を綴った冊子という嬉しいプレゼントをいただきました。年に一回の取り組みですが、子どもたち、地域との繋がりを大切にするためにも、この活動を続けていきたいと思います。

質疑応答の様子の写真