〔特集〕
安全性評価
研究所福祉機器開発部第一福祉機器試験評価室 相川孝訓

 切断者の体の一部であるとも言える義足は安全なものなのでしょうか。義足は製作時に膝継手や足部・足継手などの補装具の「完成用部品」という部品を組み合わせて作られる場合が大部分です。これらの義足を構成する完成用部品を安全に使うためには製品の強度、耐久性などの確認が必要になります。そのために規格・基準を作成し、試験装置を開発し、工学的試験を実施しています。この試験評価研究は、義足をはじめ、義手、装具、座位保持装置などについて行われており、これらの部品の安全を確認しています。
 補装具完成用部品の新規指定申請時に工学的試験評価結果の提出が求められます。これらは日本工業規格JISや国際規格ISOなどに則って試験評価が実施され、強度や耐久性などが確認されます。また座位保持装置には厚生労働省の認定基準が規定されており、この基準により強度や耐久性が確認されます。試験規格が無い部品などもありますが、安全性の確認が必要な部品については試験方法などを検討しつつ工学的試験評価が実施されています。特に強度を要求されるスポーツ用の義足などについては製造業者が独自の社内基準を作成して試験評価による確認を実施しています。
画像:義足一体構造繰り返し試験装置 義足一体構造繰り返し試験装置
 義肢装具・座位保持装置の試験装置は専用の試験機であることが多いため、試験評価が実施できる施設が限られています。体重が負荷され強度が要求される義足の部品については製造業者が試験装置を自社内に持っていることが多く、自社内でJISやISOによる工学的試験評価を実施しています。座位保持装置については日本福祉用具評価センター(JASPEC)が多くの試験評価の依頼を受け、厚生労働省の座位保持装置の認定基準による試験評価を実施しています。
 当研究室でも試験機・試験装置の開発を行ってきており、実際の試験評価も実施してきています。義足足部の歩行繰り返し試験、金属製下肢装具用継手の3点曲げ試験や繰り返し試験、義足一体構造試験の静的試験や繰り返し試験、義手の強度試験、装飾手袋の強度試験や色の測定などを実施した経験があります。
 このように義肢装具、座位保持装置については多くの部品について安全性の確認が進められていますが、規格が無い部品も多く、今後の更なる対応が求められます。

【参考】 福祉機器開発部第一福祉機器試験評価室の紹介
http://www.rehab.go.jp/ri/kaihatsu/test2015_ri5.pdf