〔特集〕
発達障害情報・支援センターにおける新型コロナウイルス感染症に関する取組
企画・情報部 発達障害情報・支援センター

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナと略す)の流行に伴い、発達障害情報・支援センター(以下、当センターと略す)ではいくつかの取組みを行ってきましたので、概要をご紹介します。

 感染予防・拡大防止に係る啓発資料等作成およびホームページ上の関連情報ページ新設
 緊急事態宣言の発令直後より、発達障害の方々に向けて必要な情報をわかりやすく届けるための啓発資料等※を作成し、周知に取組みました(※作成物:@感染予防・拡大防止のためのチラシ等「コロナをたいじ!まけない!」「コロナに気をつけましょう」、A特別定額給付金の手続きに関する啓発チラシ「10万円給付−心配解決ガイド−」)。
 また、ホームページ上にコロナの関連情報をまとめたページを新設し、迅速な情報発信につとめました。

 各地の拠点機関等(全国の発達障害者支援センター)とのWEB情報交換会
 発達障害児者支援における各地の拠点機関である全国の発達障害者支援センターとの臨時の情報交換会を、6月5日にWEB開催しました(参加機関:48センター・厚生労働省・当センター、参加者:約60名)。
 各センターにおけるコロナ対応に関する取組や課題等について意見交換を行いました。センターによっては、相談業務や研修会開催、ケース検討会のオンライン化など、試行錯誤の中で様々な工夫を凝らしている様子が伝わってきました。また、北海道から沖縄まで、全国各地とWEBでつながりあえるメリットを各センターと共有する好機となりました。

 当事者・ご家族向けWEBアンケートの実施(「新型コロナウイルス感染症の影響に関するアンケート」)
〈新しい生活様式〉の実践がすすめられる中、発達障害児者がどのような困りや生活の変化等を感じているのか、発達障害児者や家族および支援者に有用な情報を発信するには、当事者の声をきくことが重要と考え、アンケート調査(当事者向け・ご家族向け)を実施しました。

【方法】
・調査対象: ①発達障害の当事者 ②発達障害児者の家族
・調査期間:令和2年7月2日〜8月17日
・調査方法: WEBによるアンケート調査を実施。携帯端末からのアクセスをしやすくするためにQRコードを設定しました。都道府県・政令市の発達障害者支援センターをはじめ、関連団体等にも周知に係る協力を依頼しました。
※ 調査への同意と個人情報の保護:調査の同意については、回答を送信することをもって、調査への協力に同意したこととみなし、その旨をアンケートフォームにも記載しました。アンケートフォームを使用しているため個々の回答者を特定することはできず、全体としての集計結果とすることをもって個人情報を保護しました。
・調査内容:「T.〈新しい生活様式〉の実践に伴う生活の変化や困り感等に関すること」、「U.最近の状態とこれからの生活に関すること」の計10問を設定しました。当事者の困りや現状を可能な限り把握できるように、回答は選択式と自由記述式にしました。

【結果】
 回答件数は852件(当事者352件、ご家族500件)でした。紙面の都合上、ここでは、当事者向けアンケートの結果の一部をご紹介します。回答者の約6割が女性で、診断名ではASDとAD/HDが多かったです。
〈新しい生活様式〉に取り組む中での日常生活 上の困りについては、マスクを外すタイミングの難しさや、ネットでの手続き/買い物での困り感を感じている人が多かったです。
マスク着用については「がまんをして着用している」(50%)、「マスクをすることが難しい」(6%)と、半数以上が何らかの困難を感じていました。着用に困難を感じる理由については、感覚過敏に由来するものが主となっていました。着用時の状況について、「(聞き取りにくい時)相手に聞き返すことが難しい」「普段より言われたことを理解するのに時間がかかる」との回答がそれぞれ40%以上でした。
オンライン化については、回答者の約半数が戸惑いを感じていました(「どのタイミングで発言すればよいのか、よくわからなくて戸惑う(46%)」、「相手の話に集中しにくい(画面に映っている物が気になってしまう等)(29%)」)。一方、自由記述では、外出や他者と接する機会が減少したことで精神的な負担が軽減されるなど、何らかのメリットを感じているという回答も一定数ありました。
最近(この1〜2週間)の自身の状態については、何らかの不調や心配ごとが増したと回答した方が多かったです(「睡眠の問題が増えた(43%)」、「怒りっぽくなった/気分の浮き沈みが大きくなった(42%)」、「お金に関する心配ごとが増えた(41%)」)。
これからの生活に関する状態や気持ちとしてあてはまるものを選択してもらったところ、多かったのは、「いつまでこの状態(コロナを気にかけながらの生活)が続くのか、とても不安/気持ちが落ち込む」(62%)、「将来の生活についてあまり希望がもてない」(48%)でした。同時に、「感染予防に気をつけながら、趣味の時間や人とのつながりを大切にしたい」(45%)という回答も一定数あることが示されました。
 今回のアンケート結果より、回答に協力くださった方々が日常生活で様々な影響を受けていることがうかがわれました。結果概要は[速報]として9月4日にホームページで公表し、新聞等で報道されました。今後は、自由記述回答を含めた詳しい報告をまとめる予定です。
 コロナ禍での大変さはすべての人が抱えていますが、発達障害児者の困りの程度はより深刻な場合があると推察されます。そのような状況下ですが、これからも当分の間、当事者やご家族には引き続き感染予防に取り組んでいただく必要があります。当センターとしては、アンケートで届けられた貴重な声も参考に、より有用な情報発信につとめてまいります。