健康増進ひとくちコラム

禁煙のすゝめ⓶ ~たばこによる健康被害~

世界的に禁煙が推奨されており、たばこは「吸う人」だけではなく受動喫煙に晒される「吸わない周りの人達」への健康被害も甚大であるという事は多くの方がご存じだと思います。
がんや脳卒中、心筋梗塞など深刻な病気のリスクが高まることはもちろん、1本吸うごとに寿命も縮んでしまう事が分かっており喫煙による健康被害に関する研究では、たばこを吸う人の寿命はたばこを吸わない人の寿命より10年短いとも言われています。
改めて、喫煙による健康被害について図にまとめましたので参考にしてください。
 
 
さて、たばこを吸う人の中には「たばこをやめてまで長生きするつもりはない」、「病気になっても構わない」なんて考える人もいるかもしれません。しかしあなたが10本吸った時、隣にいる人はたばこを1本吸ったのと同じ事になります。
そして受動喫煙にさらされる人が吸い込む副流煙は、あなたが吸いこむ煙の何倍もの有害物質を含んでいます。
禁煙を自分の為だけと考えず、大切な人のためにもなるという事を考えてみてはいかがでしょうか。
 
          障害者健康増進・運動医科学支援センター長 内科 冨安幸志   保健師 上野宗一朗

 

参考資料
British Medical Journal 
・厚生労働省 e-ヘルスネット 喫煙とがん
・厚生労働省 喫煙の健康影響について
・厚生労働省 たばこと健康に関する情報ページ
・厚生労働省 平成 28 年 8 月 喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書
・国立がん研究センターがん対策研究所予防関連プロジェクト
喫煙、飲酒と口腔・咽頭がん罹患リスクについて 現在までの成果 多目的コホート研究
・一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
・国立がん研究センター がん情報サービス
・日本医師会 禁煙推進Webサイト

禁煙のすゝめ ①

今は昔、カナダ人から英会話の個人レッスンを受けたことがあります。当時、彼は得意気にこんな事を話していました。
「88歳になる知人は毎日タバコを吸うがとても健康で元気なんだ!」「たばこを吸っていても長生きできる。」と。
しかしその知人はあるとき風邪をひき、二階へ上がるのにも息が苦しく階段を這ってようやくたどりついた経験をしたことから、二度とタバコは吸わないと決心し禁煙に成功したそうです。
以来、私は孫の誕生を期に仕方なくたばこをやめた人、マージャン中に友人から咳を指摘され意地でたばこをやめた人など様々な理由から禁煙に成功した人に直接話を伺いました。
タバコがやめにくい、やめられない原因として、その依存性が大きく関係します。身体的依存(ニコチンへの渇望)と精神的依存(習慣)があるためです。
また、アルコールやコーヒーなどの嗜好品には昔からそれらの摂取が健康に良いという論文や発表が多くなされています。しかし残念ながらタバコに関して内科関連では良い話は聞いたことがありません。
たばこの健康被害、禁煙した際の効果を考えるとたばこを早くやめるにこしたことはありません。しかし、たばこをやめることは決して楽ではないのが事実です。
今後、たばこの有害性、禁煙の効果、禁煙成功の経験談などをお伝えしていきたいと思います。

 

障害者健康増進・運動医科学支援センター センター長 内科医 冨安 幸志

梅雨時期の食中毒にご注意ください

2024.5.22

ジメジメとし始めるこの時期、注意してほしいのが『食中毒』です。熱中症同様、夏の暑い時期が危険なのでは?と考える方も多いと思います。しかし厚生労働省のまとめによると、5月から6月にかけて細菌性の食中毒が増加する傾向にあります。これは細菌が温度25℃以上、湿度75%以上の環境を好み、増殖が活発になることが関係しています。近年5月でも気温の高い日が増えており、梅雨時期の高い湿度も相まって『食中毒』が起こりやすい環境となります。食中毒の発生場所の多くは飲食店ですが、全体の約1割は家庭内で発生しています。原因菌を「付けない」「増やさない」「やっつける」細菌性食中毒予防の3原則を守る事でご家庭での食中毒予防を行いましょう。

障害者健康増進・運動医科学支援センター 保健師 上野宗一朗

参考資料

・厚生労働省 令和5年度食中毒発生状況

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001213032.pdf

・厚生労働省 令和5年度食中毒発生状況 概要版

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001213031.pdf

・厚生労働省 家庭での食中毒予防 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/01_00008.html

・厚生労働省 家庭でできる食中毒予防の6つのポイント

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/point0709.pdf  リーフレット版

https://www.youtube.com/watch?v=A3x5T5FrsSY YouTube版 

 

 

5月から始める熱中症対策 「暑熱順化とは」

2024.5.1

総務省消防庁の調べによりますと、令和5年度の5月と6月に熱中症で救急搬送された方は全国で約10,000人にのぼります。年間を通して見ると約90,000人が熱中症で搬送されており高齢者の割合が最も多く、また熱中症が発生した場所は住居が最も多いという結果も示されています。「熱中症は夏の暑い時期に起こるもの」と考えている方も多いのではないでしょうか。5月に入ると最高気温が25°C以上の夏日や、時には30℃以上の真夏日になることもあります。寒い冬を乗り越え、過ごしやすい春を過ごしてきたこの時期、人の身体はまだ暑さに慣れていないため熱中症になる危険が高くなります。暑さに身体が慣れる事を「暑熱順化」といいます。「暑熱順化」は個人差がありますが数日から2週間程度かかると言われています。夏本番の気温が高くなる前に、無理のない範囲で早めの暑さ対策を始めることも熱中症予防・対策の一つではないでしょうか。今年の夏も猛暑が予想されております。熱中症には十分注意してお過ごしください。

障害者健康増進・運動医科学支援センター 保健師 上野宗一朗

季節の変わり目と痙縮

2017.10.16

気が付くと夏の暑さはどこへ行ったのか、冷え込む日が増えてきました。こうした気候の変化は手足のこわばりがある人にとっては症状が強く出やすい時期でもあります。「痙縮(けいしゅく)」は痙性(けいせい)症状とも呼ばれ、自分の意に反して手足の筋肉に力が入ってしまう症状で、痛みや疲れを伴うことがあります。脳や脊髄の障害による麻痺にみられることが多く、病気の発生から時間がたつとともに症状が出現する人、軽くなる人さまざまです。痙縮は手足の皮膚への感覚刺激がきっかけで出るものなので、急に寒くなるとそれが刺激になって症状が強く出ることもあります。痙縮によって体が動かしにくくなり、活動量がへったり、転倒の危険が高まることもあります。症状を軽くする飲み薬を処方されることもありますが、一日のはじめに手足のストレッチを行うだけでも体が動かしやすくなります。ストレッチをする際は目的の筋肉が軽く緊張するポジションで、息を止めずに10-15秒保持するのがポイントです。

障害者健康増進・運動医科学支援センター長 緒方 徹

視覚障害者の健康づくり講演会(於:江戸川区)

2017.9.11

今回は江戸川区福祉部障害者福祉課計画係に企画していただき、当事者と介助者の方々を対象に、中高齢以降の健康維持にむけて重要な筋力、持久力、バランス、柔軟性をテーマとした解説と屋内で安全に実施できるストレッチや運動を紹介しました。健康づくりには自分に合った目標を持つことが大事です。例えば肥満を解消したいと考えるなら、一定時間の有酸素運動を実施することになります。その際どの程度の強さの運動をすればよいのかが迷う点です。講演会では参加者に体を動かしてもらいながら自分で心拍数を測定し、ニコニコペースの運動(138-(年齢÷2)まで心拍数が上がる程度の運動)を体感してもらいました。健康づくりには何よりも継続が一番大事です。自分一人で取り組むよりも、知人・家族、ときには介助者とコミュニケーションしながら生活に運動を取り入れていくことができると楽しく実践することができます。

障害者健康増進・運動医科学支援センター長 緒方 徹

ノロウイルスの流行に備えて

2016.1.5

今回はマスコミなどでしばしば話題となるノロウイルスに関してのコラムです。冬季に流行しやすく、嘔吐、下痢、腹痛、微熱などの症状が数日間続き、ひどい場合は点滴での治療が必要なことがあります。残念ながら特効薬は無く、また予防のためのワクチンもありません。上記の症状が起こった場合は医療機関に早期受診し、確定診断を受けてください。ノロウイルスは感染力が非常に強く、吐物や便からの飛沫に10日間以上生存し、また罹患後に回復した人からも2~4週間排出されると言われています。家族内で感染することが多いことも知識として持ち、手洗いを石鹸と流水で30秒間を目標にして丁寧に長くの行う習慣をつけて感染を避けるよう心がけて下さい。

障害者健康増進・運動医科学支援センター 医長 冨安幸志

血液中の脂(血清脂質)について

2015.10.26

私たちの血液中のコレステロールや中性脂肪は生命維持に必要なステロイドホルモンの原料となり、また全身の細胞の構築にも、エネルギーとしても使われる大切なものです。しかしながら血糖と同じで多すぎても少なすぎても困ります。人間は加齢とともに必ず動脈硬化が進みます。悪玉(LDL)コレステロールが増えすぎると血管の壁にたまり、動脈硬化の進行を速め心臓病や脳卒中になるリスクが上がると報告されています。自身の検査結果でコレステロールや中性脂肪の値をご存じの方も多いことでしょう。主な治療には食事療法、運動療法、薬物療法が行われています。健診などで基準値外の数値が気になる場合は気軽に内科外来受診をしてください。栄養士や運動療法士とともに生活習慣を見直し、必要なケースではお薬を服用して正常値を維持することも有益です。

障害者健康増進・運動医科学支援センター 医長 冨安幸志


高血圧ガイドライン(血圧のおはなし)

2015.10.5

高血圧がなぜ「良くないか」といいますと腎不全や心不全、脳卒中、心臓血管病の原因の一つとなるからです。血圧を下げることでリスクが抑制されることから日本高血圧学会では140/ 90mgHgを高血圧の基準としています。多くの医師は学会の作成するガイドラインを参考に診療にあたります。最新版(2014年)では家庭血圧を重要視しています。家庭では朝夕それぞれ2回測って、その平均を記録することを推奨しています。緊張せず病院よりもやや低めに出ることから135/ 85mgHgが高血圧の基準となります。特に糖尿病患者さんでは130/ 80mmHgまで下げることが推奨されています。また医師の指示のもと24時間自宅で自動的に計測できる機械(ホルター血圧計)を使ってより繊細に血圧変動を把握することも可能です。

障害者健康増進・運動医科学支援センター 医長 冨安幸志

糖尿病の食事指導は医師のもとで

2015.6.18

エネルギーの源となる栄養素には炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質の「三大栄養素」が知られています。最近話題の低炭水化物食はそもそも2008年にアメリカ糖尿病学会が「肥満の改善に効果がある」と提唱したことから始まったようです。その後に肥満でない日本人にも高血糖の改善に有効であるというデータが示されました。一方で栄養指導に用いる「糖尿病食事療法のための食品交換表」が11年6か月ぶりに改訂され(第7版)、配分例として炭水化物60%、55%、50%の3つが用意されました。注意すべきは自己流での偏食には危険が伴うことです。特に妊婦さん、小児、腎臓疾患の方には安全性の考慮された、食事指導を医師から受けるようにしていただきたいものです。

障害者健康増進・運動医科学支援センター 医長 冨安幸志