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吃音は話し言葉が滑らかに出ない(=非流暢な)発話障害の一つですが、話し方だけが問題ではありません。流暢に話せないことを指摘されたり、笑われたりすることで落ち込んだり情けなく思ったり、話そうとすると緊張したり不安に思ったりするなど、気持ちの面にも大きな影響があります。また「言葉がつっかえるとバカにされる」「うまく話せないと変な人だと思われる」など、吃音との関連から自分をマイナスに捉える考え方が強くなっていくこともあります。そしてそのような考え方は、学校や職場での行動を制限する(例:うまく話せないので答えが分かっていても発表しない)など社会参加にまで影響が及びます。そのため、吃音のある人を支援するためには、吃音による困り具合を、話し方だけでなく、感情や行動、社会参加などの側面も含め広く把握する必要があります。つまり、WHOが提唱しているICF(International Classification of Functioning, Disability and Health;国際生活機能分類)のように、人の健康状態や障害を包括的に捉える考え方(「障害」となるかどうかは、「滑らかに話せない」という本人の状態だけで決まるのではなく、周囲がゆったり聞くなどの環境を整えられるかどうかなど、総合的に決まるものであるという社会モデル)で状態を把握することが必要です。
そこで、吃音による困り具合を様々な側面から評価する質問紙(Overall Assessment of the Speaker's Experience of Stuttering; OASES™)が米国で作成されました。この質問紙には小学生版、中高生版、成人版の3種類があり、それぞれの年代において生じやすい吃音にまつわる様々な困りごとを把握するものです。我々は、これらの質問項目に、日本の生活状況・文化等を反映させながら日本語版を作成し、日本の吃音のある方を対象に実施して日本における吃音の困りごとの特徴を明らかにしました。現在、この質問紙は原作者のDr. Yaruss(ミシガン州立大学)により出版準備が進められています(2024年6月1日現在)。本研究の詳細は以下をご覧ください。