多品種少量生産品が多い福祉機器の新たな生産手法として,3Dプリンタが注目されています.福祉機器開発室ではこれまでに,FDM(熱溶解積層法)で造形した試験片の力学的評価から,ユーザ参加型でデザインした自助具の製作まで,様々なアプローチで応用を検討してきました.
3Dプリンタの応用先として,障害者の様々な作業を支援する「自助具」に焦点を当てました.自助具の開発では,千差万別な個人の状態への適合を実現することが重要となります.そこで,生活機能の把握から設計要件の抽出に至るデザインプロセスを繰り返し試行し,3Dプリンタによる造形物が様々な機能を実現できることを確認しました.
頸損・脊損者は,運動や感覚機能に加え自律神経系にも機能障害を抱えています.その症状の一つに,体温調節機能の不全があります.発汗や皮膚毛細血管の拡張・収縮といった温熱生理反応が,環境変化に応じて適切に誘発されず,体温の極端な上昇や低下を招いてしまいます.福祉機器開発室では,特に暑熱環境での体温調節支援を目的として,ペルチェ素子を用いた車椅子搭載形抜熱システムの開発を進めています.