インターネットの活用は、情報社会における社会生活に欠くことができないものになった。
 デジタル・ディバイドと呼ばれる情報通信技術(ICT: Information and Communication Technologies)の活用機会の格差は国際協力の中心課題の一つになっており、2003年12月にジュネーブで開催された国連情報社会サミットにおいても様々な角度から検討された。
 開発途上国においては、ICTの開発と導入における計画段階からの障害者の参加と参画を軸としたユニバーサル・デザインの推進が特に重要である。
 音声もしくは点字によるコンピューター画面の表示技術は、視覚障害者にとってはまさにデジタル・オポチュニティーであるが、主に経済的な理由で開発途上国の人々がこのような機会に恵まれることは極めて希であった。
 他方、近年の地球環境問題に関する認識の向上等により、使用済みパソコンの途上国における再利用が現実のものとなり、今後数多くの中古パソコンの途上国への提供が見込めるようになってきた。そこで、これらの中古パソコンを視覚障害者が活用するために入手可能な支援ソフトウエアの提供が極めて重要になってきたのである。
 本書は、途上国の視覚障害者に提供するために当センターが開発した支援ソフトウエア(Altair for Windows English Version)の解説書である。Altair日本語版は、日本障害者リハビリテーション協会が全盲のソフトウエア開発者であり日本障害学会会長もつとめる石川准教授と共に開発し日本の視覚障害者に無償で提供して好評を博している。このたびの当センターの英語版の開発により、途上国の視覚障害者が、ワープロ文書、インターネット、さらにはCD-ROM辞書等を駆使し、自ら発信するためのソフトウエアを無償で提供することができるようになった。
 日本から提供される使用済みパソコンの活用を考慮して、英語版Altairは日本語Windowsおよび英語Windowsのどちらにでもインストールできる。英語ボイスシンセサイザー、点訳エンジン、各種フォーマットの文書ファイル閲覧用フィルターも内蔵している。そして、Web上の情報検索、閲覧および入力に必要なすべての機能とインターネットメールの送受信、さらにはWebで情報発信をする際に不可欠のファイル転送機能も持つ。対応OSはWindows95以降のWindowsのすべてである。配布は、Altairダウンロード(www.normanet.ne.jp/~altair/index_e.html)によって行われる。
 英語版Altairが、多くの途上国の視覚障害者にインターネット活用の機会を提供し、障害者の社会参加に寄与することを期待する。

山内 繁

編者
山内 繁
国立障害者リハビリテーションセンター

執筆者
河村 宏
国立障害者リハビリテーションセンター
石川 准
静岡県立大学