2025年度 研究所オープンハウス
出展物について説明をのせたページです。同じ内容をわかりやすい日本語で書いたページを追加予定です。
※開催場所等、開催についての詳細については、2025年度 研究所オープンハウスのトップページをご覧ください。
展示室A
感覚機能・コミュニケーション
幼児吃音における発達・環境的要因の解明
感覚機能系障害研究部 酒井 奈緒美
吃音とは、音の繰り返し、引き伸ばし、ブロック(声が出てこない)を主な症状とする「ことばの流れ」の問題です。多くの場合、運動・言語・認知・情動などが大きく発達する幼児期に発症します。幼児期は、様々な能力がまだ十分に発達しておらず、複雑な内容を、難しい言葉を使って、早口で話そうとするなど、能力以上の発話行動を行おうとすることで吃音が生じやすくなるとする理論(要求-能力説)があります。我々は、この理論を定量的に検証するため、子どもの様々な能力と大人のコミュニケーション行動との関連を分析しています。
網膜の変性と再生に関する研究
感覚機能系障害研究部 世古 裕子
光の情報は、眼球の一番内側にある網膜で最初に受容されるので、網膜が不可逆的な変性に陥ると見え方に支障が生じます。私たちは、分子生物学的手法によって網膜の変性と再生に関する研究を行っています。網膜の変性に関する研究では、特に網膜色素変性の新規診断法・進行予防法の開発を目指し、網膜色素変性ゼブラフィッシュモデルを作製・解析する研究を行っています。網膜色素変性は、網膜視細胞が徐々に変性脱落することによって、夜盲や視野狭窄などが進み、徐々に見えにくくなる遺伝性の病気です。この研究により、網膜色素変性の進行を少しでも遅くして、見えにくさの程度を軽減させることを目指しています。
ろう・難聴児の手話習得の支援に関する研究
感覚機能系障害研究部 高嶋 由布子
ろう・難聴児の多くは手話を話さない聞こえる親のもとに生まれます。手話を必要とする子どもたちにどのように手話を覚える環境を提供すればよいのか、どのような面で手話が重要になるのかについて、手話を主に用いて生活しているろう者と共に研究しています。
日本手話の情報アクセシビリティに関する研究
感覚機能系障害研究部 高嶋 由布子
日本手話の情報アクセシビリティを確保するには、動画の使用が有効です。動画での発信は、この10年ほどで容易になり、一般にも普及しました。この動画を活かしてどのような情報発信方法があるか、またありうるのかについて、映像手話翻訳の手順や、ニーズについて、研究経過を報告します。
運動機能1(脳卒中)
脳卒中に対する新規治療法の開発を目指した基礎研究
運動機能系障害研究部 前川 貴郊 山崎 綾子
脳卒中では、神経細胞の不可逆的な死滅により運動機能障害が生じ、リハビリテーション(以下、リハ)が必要となります。しかし、慢性期(発症から6か月以降)ではリハの効果も乏しく、回復は限定的です。その結果、脳卒中はわが国の要介護原因の第2位を占めています。私たちの研究室では、脳卒中後の脂質動態や、慢性期における神経回路再構築の可能性に着目し、リハと併用可能な新たな治療法の開発を目指しています。
衣服
障がいによる機能低下などに配慮した衣服の普及の取り組み
障害福祉研究部 清野 絵
障がいや加齢による機能低下などに配慮した衣服の普及のための取り組みを紹介します。内容は、これまで研究で試作した衣服や、衣服についての情報提供サイト、衣服の事例集などについてです。
展示室B
運動機能2(訓練機器・シミュレーター)
脊髄損傷者用長下肢装具の開発
運動機能系障害研究部 河島 則天
下肢の運動機能に完全麻痺をもつ脊髄損傷者が立ち・歩くための装具を開発しています。本展示では、製品化を目指して試作・評価を進めている成人用、小児用それぞれの装具の実物展示、動画での紹介を行います。
歩きの特徴を捉える追尾型歩行計測システムの開発
運動機能系障害研究部 河島 則天
歩行中の重心動揺、関節の動き、左右の体重配分を簡便かつ高精度に計測することを目的に開発した、患者追尾型歩行計測システムの実機展示およびデモンストレーションを行います。
重心動揺リアルタイムフィードバック装置BASYSの開発
運動機能系障害研究部 河島 則天
立位姿勢時の重心の動きを検知し、リアルタイムに床面を動作させることで姿勢調節を整えるためのリハビリテーション機器です。本展示では実機体験と臨床研究の成果についてのパネル展示を行います。
車いすセッティング最適化のためのシミュレーター・設定可変車いすの開発
運動機能系障害研究部 河島 則天
身体機能・障害特性に応じた車いすの最適セッティングを行うための計測装置、設定用車いすの実機展示を行います。車いすユーザーの方には車いす姿勢および重心位置の計測を体験して頂けます。
自動車運転評価用シミュレーターシステムの開発
運動機能系障害研究部 河島 則天
脳卒中当事者が運転再開を目指す際の評価と訓練を行うための運転シミュレーターの実機展示を行います。このシミュレーターシステムは運転操作時の視線と頭部の計測、ハンドルやアクセル・ブレーキペダルの記録を行うことで、危険運転の予測や安全運転技能の評価を行うものです。
スポーツ評価・支援
パラスポーツの科学的支援
運動機能系障害研究部 彦坂 幹斗
様々なパラスポーツで用いられる車いす、用具のサポート事例、競技パフォーマンスの評価の事例を紹介します。
展示室C
福祉機器1(肢体不自由1ほか)
義肢装具の試験評価
福祉機器開発部 石渡 利奈
福祉機器開発部、福祉機器試験評価室では、ユーザーの方が、より安全で十分に機能する義肢装具を利用できるようにするため、義肢装具の試験評価に関する研究を行なっています。
具体的には、義肢装具の試験方法に関する調査研究、実際の試験や、破損データの収集分析等をもとに、試験評価法を開発しています。
試験は、大きな力がかかった時に、義肢装具が耐えうるかを調べる強度試験、長期間の使用に耐えうるかを調べる繰り返し耐久性試験などがあります。
デジタルヒューマンモデルによる福祉機器開発
福祉機器開発部 原口 直登
福祉機器はユーザーである障害者や高齢者の身体的特徴に適合した製品を提供することが重要です。しかし、これには試行錯誤的な調整作業が必要となり、大きな手間と時間がかかってしまう問題があります。本研究では、福祉機器ユーザーをコンピュータモデルによって再現したデジタルヒューマンモデルを活用した福祉機器の適合化技術を提案し、効率的な福祉機器開発プロセスを実現することを目標としています。
安全なクッションの開発を支える“見えない力”の評価技術
福祉機器開発部 白銀 暁
車椅子用のクッションは、ただ柔らかければよいわけではありません。長時間座る方の身体を守るには、姿勢をしっかり支えながら、“すべり”による皮膚への負担(せん断力)を抑えることが大切です。せん断力は目に見えず、計測も難しいため、私たちは現在、その評価方法の開発に取り組んでいます。本展示では、褥瘡予防におけるせん断力の重要性と、評価試験の構築に向けた最新の取り組みをご紹介します。
重度肢体不自由者の体調支援に関する研究
福祉機器開発部 高嶋 淳
自身の体調が感じ取りにくい重度肢体不自由者のための体調変化を予測する装置開発のための研究をしています。
支援機器の開発・普及のためのモデル拠点構築に資する研究
福祉機器開発部 井上 剛伸
障害のある方の自立・自律を促進するための支援機器をテーマとして、その開発や普及を進めるための拠点作りに関する研究を実施しています。これまでに、国内の拠点機能を有する機関を対象として、そこで実施している拠点の機能や役割について調査を行い、拠点に求められる機能を明らかにしてきました。また、あわせて地域での他機関との連携の重要性も見えてきたため、愛媛県を対象として関連する機関が連携して拠点の機能を発揮する新なたなモデルの構築も進めています。
障害者自立支援機器の開発・利活用に携わる医療・福祉・工学分野の人材育成モデルの普及促進に資する研究
福祉機器開発部 井上 剛伸
障害者自立支援機器に関する教育について、理学療法、作業療法、言語聴覚療法、視能訓練、生活支援工学の各領域で役立つ人材育成プログラムを作成するとともに、それらの実装に向けた指針やガイドラインも作成しています。これまでに、各領域での人材育成プログラムの構成案を作成するとともに、これらの人材育成プログラムを導入するための指針案を作成してきました。
防災
障害者の災害対策チェックキット 自分でつくる安心防災帳
福祉機器開発部 硯川潤
障害のある方が非常時にも安心して生活できるよう、自分に必要な備えを確認・整理する「自分でつくる安心防災帳」を紹介します。紙のチェックキットとして1万部以上の活用実績があり、現在はウェブアプリ版を開発中です。アプリはスマートフォンなどから利用でき、地域のワークショップなどでは小型サーバを使ってオフラインでも提供可能です。ぜひ実際に体験してみてください。
展示室D
発達障害・認知機能(基礎研究)
多様な感覚の問題についての調査研究
脳機能系障害研究部 和田 真
発達障害のある人の多くが持つ感覚の問題についての調査研究を紹介します。
発達障害者の表情認知の特徴
脳機能系障害研究部 Kevin Widjaja
自閉スペクトラム症の人と定型発達の人が表情変化をどのように感じるか調べている研究について紹介します。
発達障害者の聴覚の問題とその軽減を目指す研究
脳機能系障害研究部 市川 樹
発達障害の人の主要な困りごとの1つである聴覚過敏の特性を調査したり、支援するシステムを開発するための研究の紹介です。
発達障害者の視覚探索の特徴を明らかにするための研究
脳機能系障害研究部 矢野 幸治
発達障害のある人の視覚探索の特徴を脳機能計測などを用いて多角的に解明するための研究の紹介です。
展望記憶に対するニューロフィードバックトレーニングの有効性の検討
脳機能系障害研究部 武田さより
展望記憶とは、未来の予定を記憶して必要なときに思い出す認知機能のことをいいます(例:3時になったら薬を飲む)。本研究では、ニューロフィードバックという脳活動を自己調節するシステムを用いて、展望記憶の能力を高めることができるかどうかを調べます。
福祉機器2(肢体不自由2)
義肢装具技術研究部の歴史
義肢装具技術研究部
義肢装具技術研究部は障害者のリハビリテーションに関し、義肢装具の製作及び修理のための技術に関する調査及び研究を行っています。当部は研究所で一番初めに開設された部署です。今回のオープンハウスでは当部の活動内容を紹介すると共に、センター開設以前の義肢製作や、研修を主とした技術普及活動の記録映像を公開します。また、当時の義肢と現代の義肢を展示します。
あなたの歩行はどんな感じ?
義肢装具技術研究部
着衣型モーションキャプチャシステムを用いて、あなたの歩行を分析します。
※開催時間は下記の通りです。希望者全員の参加は約束できかねますので、あらかじめご了承ください。
①10:30-11:00
②12:00-12:45
③14:00-14:30
模擬筋電義手の体験会
義肢装具技術研究部
筋電で操作する義手の体験ができます。大阪・関西万博で行われた体験会をオープンハウスでも開催します。あなたは義手で物をつかめる?運べる?手離せる?
※開催時間は下記の通りです。希望者全員の参加は約束できかねますので、あらかじめご了承ください。
①11:15-11:45
②13:00-13:45
③14:45-15:15
重度運動機能障害者のためのジェスチャインタフェース
障害工学研究部 中山 剛
おもに手や足などの動きに困難がある障害者のための入力装置です。手、足、肩、頭などいろいろな体の動きで入力ができます。
温熱環境
人工気候室の紹介
障害工学研究部 三上 功生
温度や湿度が人間の安全・健康・快適にどの様な影響を与えるかを追求するための人工気候室を紹介します。
展示室E
福祉機器3(認知機能)
過疎高齢化地域での情報支援ロボットのコミュニティ実装手法の開発
福祉機器開発部 間宮 郁子
軽度認知症やMCI(認知機能の低下が見られる状態)では、脳神経細胞の大幅な減少等により、新しいことを記憶しにくくなったり、日付やスケジュールが分からなったりして、自分で暮らしを切り盛りすることが難しくなります。
こうした方の多くは、介護サービスや医療資源と接点がありません。
私たちは過疎高齢化地域をモデルとして、住民が情報支援ロボットを使って、こうした高齢者を自宅で支える体制を作りました。住民の皆さんと活用場面や運用モデルを考え、外出の少ない高齢者15名の自宅で試行しました。これらの事例を紹介します。
そのほか関連研究や、ロボット利用者の声を、ホームページで紹介しています。
認知機能を支援する機器の利活用に関する研究
福祉機器開発部 川崎 めぐみ
リハビリテーションにおいて認知機能を支援する機器は、認知機能障害を有する方に対して、生活の自立を支える効果が示されています。当展示では、スケジュール支援機器、服薬支援機器、見守り支援機器など、認知機能を支援する機器を80点ほどご紹介しています。これらの支援機器を試用してもらう機会が増えることにより、支援機器に対する理解を深め、機器の導入支援が進むことが期待されます。この研究では、認知機能を支援する機器を必要とする方に、最適な機器が提供できるよう、有効な提供方法や支援体制を検討し、普及開発の促進を目指しています。