〔巻頭言〕
総長就任挨拶 総長 森 浩一

 令和3年4月1日付けで、飛松好子前総長の後任として国立障害者リハビリテーションセンター(以下、「センター」)総長に就任いたしました。このセンターには平成10年4月に入職しましたので、センターの42年目を迎える歴史のちょうど後半を見てきたことになります。この間、医学の急速な進歩とともに、リハビリテーションの対象が大きく拡がり、障害を取り巻く社会情勢や福祉制度も大きく変化し、それとともにセンターも変化し続けています。
 40年前は、国内でリハビリテーションを提供できる施設が数えるほどしかない状況でした。障害への対応は、医学的に障害を軽減することが中心でした。その後ICF(国際生活機能分類)[厚生労働省]がWHOで採択され、障害に対する社会(環境因子)の重要性が明確にされ、障害者権利条約[内閣府]が制定され、リハビリテーションは社会参加を実現するための手段の一つであり、どのような形で社会参加をするのかは障害当事者の選択に委ねられるようになり、障害者福祉サービスが「措置」から障害者の選択による契約を基本とする「支援費」に替りました。また、障害種別による差はありますが、リハビリテーションが全国的にかなり普及してきました。さらに、介護保険による支援も普及してきました。
 当センターの目的は、障害のある人々の自立及び社会参加を支援することです。設立当初の当センターの役割は、身体障害のリハビリテーション施設のモデルの提示とリハビリテーション専門職の人材育成が中心でした。上述の社会・制度の変化に伴い、現在は先導的なリハビリテーションを開発・提供すること、リハビリテーションに関する情報を集約・提供して全国均沾化きんてんかを支援すること、政策に役立つ研究を行うこと等の役割が重要になってきています(国リハニュース第300参照)。この一環として、高次脳機能障害発達障害等の診療・研究・リハビリテーション・情報提供・全国自治体の支援拠点のサポートも行われています。また国際的には、福祉関連の国際規格策定に寄与し(例:国リハニュース第299)、WHOの「障害の予防とリハビリテーションに関する指定研究協力センター」として、4年毎に改定される行動計画に沿って開発、啓発活動を継続して行っています(国リハニュース第367参照)。
 上記のような内・外の変化とセンターの役割の拡張に鑑み、平成30年に「国立障害者リハビリテーションセンターの今後のあり方について」検討が行われました(国リハニュース第364参照)。この報告に基づき第3期中期目標(5か年計画)が設定され、令和2年度から遂行されています。この中期目標では、共生社会の実現に向かう時代に合った、あるいは時代を先導する、あるべきセンターの実現のために、国立の中核機関としての役割の遂行、維持、強化、更新を行い、それに必要な組織改変の計画も立て、時機を見て執行できるようにすることとしています。
 第3期中期目標を達成するために、部門間の有機的な連携の強化など基本的なことを含め、いくつかの解決すべき運用上の課題があり、職員間で共有しているところです。昨年度はコロナ禍のために予期せぬ対応が多くなり、一部では計画通りの遂行が困難になりましたが、今年度は感染予防策を織り込み済みとして、計画通りの執行ができると期待しています。それ以外にも十分把握ないし対応できていない問題点も出てくるかと存じますので、皆様の忌憚ないご意見・ご指導、さらにはご協力をいただければ大変ありがたく存じます。