ゴールボールのアイシェード開発
 (3年生 古瀬友香)

ゴールボールのアイシェード開発

 私は入学してすぐに,徳井先生の研究補助員としてパラリンピックの正式種目であるゴールボールの専用プロテクターとアイシェードの開発研究に参加させていただきました。特にアイシェードの開発は,日本代表選手が使用するレベルになるまで,開発の最初から最後まで携わり,何度も先生と工夫を重ねました。
 これらの研究を行うにあたり,私はゴールボールを知らなかったので,当センターにあるゴールボール部の練習に選手見習いとして参加させていただきました。ゴールボール部は自立支援局の部活動の1つで,視覚に障害のある利用者の方が練習していますが,パラリンピックで活躍している外部の選手も練習に参加したりしていました。私も部活動に参加させていただきながら,選手からの要望を聞いたり,研究で試作したプロテクターとアイシェードを私自身が着用して競技を行ったりすることで改善点などを見つけ改良を行い,トライ&エラーを繰り返しながら開発を進めていきました。研究の補助員ではありますが,競技を行って見つけた改善点や新しいアイディアについては全部取り入れていただき,在学中に学会発表もさせていただきました。

 また,ゴールボール部の選手とは,大会や練習会の会場までの歩行ガイドや,プライベートでのプロ野球観戦など楽しい思い出とともに,義肢装具とはあまり馴染みがない視覚障害というものへの理解も選手と接する中で自然に身につきました。学業との両立は大変でしたが,机上での勉強では得られない大変貴重な経験ができたと思います。

 この研究を通して,開発というものは1回の試作で良いものができることはなく,100個作れば99個がボツになる,繰り返し改良を行うことでより良いものが出来ていくということや,さまざまなアイディアを考える楽しさなどを学ぶことができました。製作したものを実際に使用してもらえることになった時や,選手から「かっこいい。使いやすい。」等の声を聞いた時の達成感や喜びは格別でした。アイシェードは義肢装具士が作る物ではないという意見もあるかもしれません。しかし,”障害のある方にものづくりでサポートする”ということは同じであり,そこに障壁を設けるべきではないと考えます。視覚に障害のある方々も一緒に勉強する国リハという環境にいたからこそアイシェードで困っている選手がいることを知ることができ,日本代表選手に使ってもらえるまでのレベルに仕上がったのだと思います。アイシェードは,私が国リハで義肢装具分野も含め,多くのことを学んだ証です。

 ゴールボール選手が使うかっこいいアイシェード,それは私の誇りです。

(*ゴールボールとは…アイシェード(目隠し)を着用して,1チーム3人のプレーヤー同士が鈴の入ったボール1.25kg)を転がすように投球し合い,自陣のゴールを守りながら相手ゴールにボールを入れて得点数を競う,視覚障害者のために考案されたスポーツ。パラリンピック正式種目の1つで,日本では女子チームが2004年から連続出場を果たしており,リオ大会では残念ながらメダルを逃したものの,アテネ大会(2004年)では銅メダル,ロンドン大会(2012年)ではパラリンピック団体競技初の金メダルを獲得している。アイシェードを着用すればすべての選手が同じ条件下で競技ができるため,視覚障害者だけではなく,晴眼者が出場する大会もある。


看護助手を経験して(2年生 永野莉央)

 私は一年生のときに国リハセンター内の病院でモーニングメイトという看護助手のアルバイトをしていました。具体的には入院患者の方々の整容や食事介助を主に行っていました。シフトは週に3回で、平日は朝7時から8時半まで、土日は7時から9時まででした。勤務時間は本来9時までのところを、授業に支障がないよう十分な配慮を頂き、学業とアルバイトを両立することができました。

 義肢や装具を使用している入院患者の方々との触れ合いを通して学校で習ったことを実際に見ることや、その人が何に困っているのかを知ることができ、一般的なアルバイトでは経験できないようなことを経験させてもらいました。食事動作や歩行、排泄、更衣動作、髪の毛を結ぶことなど私が実際に送っている日常の動作一つ一つを行うことが、患者さんにとってどれほど体力を使い、困難なことであるかを目の当たりにしました。患者さんは自分のことで大変なはずなのに、いろんな話をして笑わせてくださったり、優しい言葉をかけてくださったりと、慣れない私に大変優しく接してくださいました。また実際に義足や装具を使用している入院患者の方たちと接することで、教科書には書いていないようなお話を聞かせてもらい、もっと勉強しようと意欲的になりました。

 朝早く起きることなど大変な面もありますが、看護師の方々の働く姿をみて、患者さんに対して時には厳しいことも言う優しさや、一緒に働く他学科生をみて,一人の患者さんに対するリハビリテーションには義肢装具だけでなく,嚥下では言語聴覚学科の学生,スポーツにはリハビリテーション体育学科の学生が専門知識を学んでいて,それぞれとても勉強になりました。私は義肢装具の分野だけのリハビリテーションを考えていましたが,義肢装具さえ使っていれば生活がよくなることなどないのだと考えさせられました。

 この経験を生かして、単に義肢や装具を作るだけではなく、患者さんが本当に必要とする義肢や装具はどういったものなのかを第一に考えられる義肢装具士になりたいと思っています。


誇り高き伝統(2年生 河野佑哉)

 国リハPO学科にはホコリがありません。
 どういう事かと言うと、今まで国リハPO学科に在学していた先輩方が実習室や教室を授業後にしっかりと掃除をして施設や道具、機械を大切に守られてきたという事です。その結果、私たち在学生は、現在業界で活躍されている先輩方が学生だった頃と同じ環境で素晴らしい授業を受けることが出来ています。

 さらにPO棟には先輩方の代から守られてきたものがあります。ショーケースには古いものから新しい物まで様々な義肢や装具が、図書室の本棚には古く貴重な資料をはじめ,卒業した先輩方が寄贈してくださった新しい図書がたくさん保存されており勉強に困ることはありません。

 はじめの一文に書いたことは「ほこり」間違いでした。
 私の考える国リハPO学科の誇りは、貴重な資料や義肢装具など、代々守られてきた施設の中で伝統に囲まれながら一流の授業を学べることです。

 だから私も国リハ生である誇りを忘れず,一流の義肢装具士になりたいと思っています。