<此簀嘶

 頸髄損傷者は膀胱直腸障害という合併症があるため、特殊方法で排泄処理を行います。そのため、環境においても特殊な設備を整えることが必要となります。障害の状態や動作の方法により異なった環境整備が必要なため、本人・家族や医療専門職からの情報を十分に得て検討します。

排尿

 頸髄損傷者の排尿方法としては、自己導尿による尿器や便器への排泄や収尿器への排泄があります。尿器や収尿器などの容器へ排泄した後、後始末用に排尿器具を洗浄する環境が必要となります(介助で行う場合にも同様)。
  排水と給水の設備が確保できる場合には、取り付けスペースを念頭に入れ汚物流しの設置を考えます。また、トイレスペースを広くすることや段差をなくすことで、車いすの寄り付きを良くして排便用の便器と尿処理用の流しを兼用する方法もあります。

排尿のポイント

尿処理の場所が必要

 頸髄損傷者の場合、自己導尿を行い尿器に排泄する方法や収尿袋(膀胱瘻や尿集器)に排泄する方法がありますが、いずれも便器や汚物流し等への尿捨てが必要です。便器へのアプローチが可能かどうか(段差がないか、トイレ内に車いすが入れるか)を検証する必要があります。また、そのための解消手段としてトイレの壁を改修してトイレへのアプローチを行うことや、建具の付け替えや段差の撤去も視野に入れて検討します。また、カテーテルや尿器の洗浄のための設備が必要なため、汚物流し兼用の便器の設置やトイレ内に後付可能なシャワー装置を設置するなどの方法も考慮します。水周りでの尿処理が自力では物理的環境上困難な場合は、尿捨てのために自室などにポータブルトイレやバケツ等で処理する場合もありますが、他者による後始末が必要となります。

※尿袋を使用する場合、袋の洗浄を行う器具洗浄の流し台や干す場所の確保にも配慮が必要。(頸髄損傷者自身で収尿袋や簡易留置カテーテルの洗浄を行う場合には、入り込みのよい洗浄スペースが必要)


排便

 頸髄損傷者は、生活環境・動作能力により、適する排便環境は大きく異なってきます。例えば、高位頸髄損傷者など座位姿勢がとれない方の場合は、ベッド上での介助排便になる場合が多いですが、それ以外の方には背もたれのある環境で長座位の姿勢で排便を行う高床式トイレや、トイレチェア・洋式トイレなどを残存機能状態や住環境、本人・家族の意向により方法を決定し、トイレ環境の整備を検討します。自力で各トイレ環境に移乗(移動)することが困難でも、介助によりトイレ環境にて排便を行うことは身体面・心理面からも理想的です。機能レベルとトイレ周囲の環境、家族の共用の有無などを配慮して、使用者の最も適した排便方法を考える必要があります。
また、頸髄損傷者の排便時間は長時間を要することや、感覚障害などにより褥瘡を作りやすいことから、あらゆる箇所において褥瘡予防や安定した姿勢で排便を行えるような環境を整備することが重要です。

※クリックすると大きな画像が見られます。

※クリックすると大きな画像が見られます。

高床式トイレのポイント

材質

 高床式トイレの台は、木で製作されることが多く、合板とクッション素材を重ねたものにレザーを張り、土台の上に乗せています。便器の洗浄や故障時の修理が行いやすいようにレザー台は外せるようにしておきます。また、浴室と隣りあわせの場合は、浴室の湿気が木で作製している高床式トイレ台に影響しないように配慮します。

スペース

 高床式トイレは車いすと同等の高さのもので、長座位姿勢で排便を行うため、着替えや座薬挿入などの動作を行うためのスペースの確保を行います。動作を行うためには、便座先端部から1000mm以上、横幅は1300mm以上のスペースが必要です。また、車いすを乗り捨てるスペースとして1000mm程度は最低限必要。既存のトイレを改修する場合は、トイレ内の幅や便器の向き、壁の撤去(移動)や段差の解消を行い設置が可能になるかを検討します。また、家族と兼用する場合もあるため、高床面の一部取り外しが行えるようにすることもあります。建具の設置が困難な場合は、カーテンなどで仕切ります。

アプローチ

 車いす上から、便器に直接乗り移る場合も、トイレの出入り口の段差をなくすことや便器の向きの配慮により使いやすさが異なってきます。また、段差を解消してトイレ内に車椅子が入り込めるとさらに動作には有効です。
介助で、台まで移動する場合は、トイレ内に吊り下げ式リフトを設けることや、自室内などから連続した天井走行式リフトを使用することがあります。

既存のトイレの改修が困難なとき

 自宅や賃貸住宅のトイレを改修できない場合は、ポータブル便器を使用して簡易的に自室内に高床式トイレ等のトイレスペースを設けた例もあります。

合併症の予防

 長時間の排便時間を要するため、冷暖房などの温度管理と褥瘡予防には十分に配慮します。

集合住宅や賃貸住宅

 賃貸住宅の物件を探す場合のトイレは、出入り口から正面ではなく、横向きになっているほうがアプローチや動作方法の面で有効に検討できる場合があります。

トイレチェアのポイント

チェア排便の選択

 家族とトイレを共用する場合や、高床式トイレの設置が困難な場合、長座位(足を伸ばして座る)よりも端座位(足を下ろして座る)の姿勢が好ましい排便姿勢である場合、自室での排便動作としてチェア上での排便が望ましいとされた場合等選択される方法です。本人・介助者の意見を踏まえながら検討します。

チェアの選定

 トイレチェアは、市販のものを使用する場合と、オーダーで作製する場合とがあります。頸髄損傷者は、座位姿勢がとりにくいこともあるため、自力で排便動作を行う場合には、オーダーで自操式のものを作製することもあります。いずれにせよ、長時間の姿勢保持と褥瘡への配慮は欠かせません。

使用場所

 場所は、既存トイレで行う以外にも自室で新規に便器を取り付けることや、バケツを使用して行う方法もあります。自室で行うときは、カーテンで仕切るなどの方法を用いれば臭いの隔離やプライバシーの配慮にもつながります。※換気に配慮する

動作・導線

 トイレチェアを使用する場合、更衣動作はベッド上などの安定した場所で行うことになります。その後のチェアへの移乗や、座薬挿入動作などの一連動作を想定して、導線(移動時のプライバシーの配慮やトイレとの距離など)や便器の配置などを考慮することが必要です。

合併症の予防

 長時間の排便時間を要するため、冷暖房と褥瘡予防には十分に配慮します。(別府重度センターのトイレチェアでは長時間の座位姿勢となるため、特殊なジェルマットを加工した座面を使用している。)

集合住宅や賃貸住宅

 アパートやマンションにおいて、トイレチェア使用の場合はトイレへのアプローチ(出入り口の段差など)、トイレ内の幅や便器の向きを検討します。

洋式便器排便のポイント

洋式排便の選択

 アパートやマンションにおいて、トイレへのアプローチ(出入り口の段差など)、トイレ内の幅や便器の向き)を検討します。

便器の高さ

 便器の高さは、移乗動作等を考えて、車いすの座面とほぼ同じ高さが理想です。また、便器上に座位をとったときには更衣動作時などの安定性を考えて、足底が十分に床面につく高さを基本として考えます。
※便座上に褥瘡予防シートを置く場合は、その高さも念頭に置きます。

手すりの配置

 頸髄損傷者は、洋式トイレの使用が可能であっても姿勢保持等の目的もあり手すりの設置が必要となります。トイレ内の手すりは、個人によって使用しやすい位置や長さが異なります。また、使用方法も、移乗動作の時に用いる場合や、排便の姿勢の保持に用いるなど様々であるため、形状や取り付け位置など使用者の意向や動作方法を踏まえ十分な打ち合わせが必要です。

その他の環境整備

 姿勢保持や安全な動作遂行のため、洋式便器の横やトイレスペース全面に台を設置する場合があります。それに関しても、褥瘡予防などに配慮する必要があります。また、家族と共用する場合にも、設置場所などの配慮が必要です。

合併症の予防

 長時間の排便時間を要するため、冷暖房等の温度管理と褥瘡予防には十分に配慮します。

集合住宅や賃貸住宅

 出入り口の段差を解消し、車いすを便器の近くに寄せ、直接便器に乗り移りが可能な様に整備します。また、そのような物件を新たに探す場合は、便器の向きにより使用しやすさが異なってきます。出入り口から正面ではなく、横向きに便器があるほうが有利な場合が多いでしょう。扉は、開き戸で使用しづらい場合や、開口が不十分である場合は、取り外してカーテンを設置するなどの整備を検討します。