<XI>福祉機器

 頸髄損傷者にとって、福祉機器等を使用することにより生活範囲の拡大が図れ、本人・介助者においても生活範囲が広がることや、介護量が少なくなるなどの利点があります。しかし、設置には多額のコストがかかり、維持費(ランニングコスト)も必要となるため設置するにあたり慎重に検討することが必要です。

ⅰ)リフト

 天井走行式リフトは天井にレールを這わせるため、天井の補強が必要である。導線を確保できれば、介助者が負担を少なくすることができます。天井走行式リフトはレールの取り付けが確保できれば、トイレ・浴室と広い範囲で使用可能です。簡易的なものではアーチ式のものがありますが使用場所が限定されます。床走行・固定式リフトという選択肢においても、それぞれ利点・欠点があるので、使用者・専門家の意見を踏まえ各人に適合するものを検討します。

ⅱ)エレベータ・ストレーター

 頸髄損傷者が主に生活するスペースは、屋内移動や非常時を考え、一階部分に設けることが望ましいですが、やむを得ず二階部分以上になる場合にはエレベータやストレーター(段差解消機とエレベータを組み合わせたようなもので個室にはなっていない)を設置する方法があります。その際、機種によって設備が異なることがありますので、自力でボタンを押すことができることも事前に確認しておきましょう。

ⅲ)階段昇降機

 階段昇降機への移乗が介護または自力で行えることが使用条件となります。また、頸髄損傷者の場合は姿勢を安定させるために体幹の固定や介助者の付き添いが安全面の確保のため必要です。家屋内の使用箇所が二階以上にあるがエレベータや昇降機の設置が困難な場合のやむを得ない処置となる場合があります。基本的には、体幹機能障害のある頸髄損傷者には不向きと言えます。ただし、不全麻痺の方においては、使用することが有効な場合もあります。